4 現代社会に対応した契約類型の導入

第24.4 現代社会に対応した契約類型の導入

● 新たな典型契約の規定

 

Q・今回の債権法改正で、現代社会に対応した契約類型の導入が議論されているというのは、具体的にはどういうことでですか。

A・従来の民法の債権法の部分には、「贈与」や「売買」「消費貸借」「賃貸借」「雇用」「請負」などといった、13種類の契約について、それぞれ、契約の要件や効果、内容が、一般的に規定されています。
 このように、民法があらかじめ一般的に定めた契約類型を「典型契約」といいます。
 しかし、社会の実際の取引現場で行われている契約は千差万別です。
 典型契約にあてはまらない契約類型は多々あります。
 こうした典型契約に当てはまらない契約類型を「非典型契約」といいます。

Q・典型契約の場合には、契約書が不十分でも、民法に規定があるので、契約内容がはっきりしていますね。

A・そのとおりです。契約の当事者間でトラブルが発生した場合、契約書がなかったとしても、民法の規定を基準として、物事を考えることができます。
 そのため、どのように解決されるかの予測が立てやすくなります。

Q・民法に規定のない、非典型契約の場合には、困ってしまいますね。

A・非典型契約の場合、契約書が不十分の場合には、様々な要素から解決の基準を導き出すしかありません。
 そのため、どのように解決されるかの予測が立てづらいといえます。    
 民法が制定された当時と比べ、現代は様々な面で変化しています。
 今回の債権法改正では、現代では一般的と考えられている契約類型について、新たなに典型契約として規定する方向で検討が進んでいます。

Q・どのような契約が、新たな典型契約として考えられているのですか。

A・例えば、ファイナンス・リース契約や、フランチャイズ契約などについて、その要件や効果、内容が一般的に規定される予定です。


 

● 従来の典型契約に関する内容の変更

 

Q・従来の民法に規定されている典型契約も、現代にはマッチしていないものがあるのではないですか。

A・典型契約についても、改正が検討されています。
 すでに判例や学説上で確立しているルールを明文化したり、現代の取引事情に応じた内容が挿入される予定です。
 一例をいうと、典型契約のなかに「寄託契約」というものがあります。
 これは、ある物を保管することを内容とする契約で、私たちが銀行に預金するのも、この寄託契約の一類型とされています。
 今回の債権法改正では、この寄託契約の中に、流動性預金口座に関する規定を盛り込むとされています。
 預金口座を利用した振込や引き落としといったサービスは、多くの人が利用しており、私たちの生活に不可欠です。
 このような、私たちの経済活動に必要不可欠の取引について、法律という形で紛争が生じた際の解決の基準を定めておく必要性は高いのではないでしょうか。


 

今回の民法改正は、民法制定後、初めて契約のルールを抜本的に変更するものです。
 私たちの生活への影響も少なくありません。今後の動向が注目されます。