2 消費者保護の観点の導入

第24.2 消費者保護の観点の導入

● 現代社会のモデルに基づく改正

 

Q・民法の債権法改正に関する議論で、消費者保護の観点を導入することが検討されているのはなぜですか。

A・現在の民法は、社会構造が比較的単純であった近代社会に誕生しました。そのため、契約の成立要件や効力についての規定も、契約当事者が対等であることを前提にしています。
 この点について、現代社会に対応させるためには、消費者保護の観点を導入して修正する必要があると考えられています。

Q・現代社会に対応させるとは、どういうことでしょうか。

A・社会構造はますます複雑化し、専門的知識の比重が増しています。
 そのような専門的知識を利用して事業を行っている業者と、専門的知識のない個人との間には、大きな格差が生じているというのが実情です。
 それを踏まえ、知識や交渉力に格差のある当事者による取引・契約関係をモデルとした規定を、債権法に盛り込もうというものです。


 

● 断定的判断の提供等を理由とする契約の取消を認める規定

 

Q・具体的にはどのような規定が検討されているのですか。

A・不確実な事実について、事業者が消費者に対し、断定的な判断を提供して契約を締結した場合や、事業者が、長時間にわたってしつこく勧誘するなどして、消費者が困惑することによって契約を締結した場合に、消費者による契約の取消を認める、といった規定が検討されています。

Q・そのような規定は、すでに消費者契約法といった特別法でも規定されているのではないですか。

A・はい。その上でさらに、これまで特別法の中で扱われていた、消費者と事業者という概念や、消費者保護の観点を、一般法である民法の規定に盛り込むことにより、取引の実態に即した法解釈がなされるよう促し、実質的に公平な契約関係や、消費者の保護の実現を図ろうとするものです。


 

● 不当条項リスト

 

Q・他にも、消費者保護の観点から議論さていることはありますか。

A・不当条項のリスト化による規制の導入が検討されています。
 不当条項とは、契約の一方当事者に一方的に不利益を課すもので、それが信義誠実の原則に反する程度に至っているものを指します。
 例えば、事業者側が債務を履行しない場合に、一方的にその損害賠償責任を減免するといった規定は、不当条項となる可能性があります。
 そうした不当条項をあらかじめ条文に列挙することによってリスト化し、そのような条項を定めても無効であることを明示しようとするものです。

Q・予めリスト化することにより、そうした不当条項を契約に盛り込むことが避けられることを狙うのですね。

A・そのとおりです。
 紛争が未然に防止され、結果的に消費者の保護に資することになります。