6 財産管理・認定死亡・失踪宣告

第17.6 財産管理・認定死亡・失踪宣告

● 不在者の財産管理

 

Q・行方不明となっている父親名義の家屋の修繕や、賃貸借契約の更新、また預貯金の解約などを、父親に替わって行うには、何か方法がありますか。

A・家庭裁判所に「不在者の財産管理人」を選任してもらうことができます。

Q・財産管理人として選任を受ければ、父親に替わって何でもできるのですか。

A・財産管理人の権限は、父親の“財産を保存する行為”と、“父親の権利の性質を変更しない範囲での、財産の利用・改良を行う行為”とされています。
 いわば財産の「管理行為」であり、「処分行為」は権限外とされています。
 したがって、家屋の修繕や、賃貸借契約の更新、その他、期限が到来した債務の弁済や、腐敗しやすいものの処分、また、そのために必要な預貯金の解約といった行為などは、財産管理人の権限内の行為と考えられます。

Q・家族の生活のために必要な預貯金の解約もできますか。

A・合理的な範囲のものであれば、裁判所の許可を得て、解約することができる場合があると考えられます。
 その他、「管理行為」を超えるもの(父親にかわって遺産分割協議を行う必要がある場合、一定の財産処分が必要な場合など)であっても、裁判所の個別の許可を得ることによって、財産管理人がこれを行うことができます。


 

● 認定死亡の制度

 

Q・行方不明のままでは、いつまでも相続の手続きや、死亡保険金の受領といったことができません。
 行方不明者を死亡として扱う制度について教えて下さい。

A・水難、火災、その他の事変で死亡したことが確実だが、遺体が発見されない場合に、警察署や海上保安庁などの官庁・公署が死亡地の市町村長に報告し、それに基づき、戸籍上、亡くなったものとして扱う「認定死亡」の制度があります。 
 死亡認定には、これまで1年ほど時間がかかっていましたが、東日本大震災の際には、以下の書類を用意することで、市区町村の戸籍窓口が、可能な限り、死亡届を受け付ける運用がなされました。
 (1)必要書類・・・届出人の申述書
 (2)補足書類(死亡したことを推測させる書面であって、可能な限り提出すべきもの)
    ・ 死亡したと考えられる方の被災状況を現認した者等の申述書
    ・ 在勤証明書又は在学証明書等死亡したと考えられる方が東日本大震災の発生時に被災地域にいたことを強く推測させる客観的資料
    ・ 死亡したと考えられる方の行方が判明していない旨の公的機関からの証明書等
    ・ 僧侶等が葬儀をした旨の証明書等その他参考となる書面


 

● 失踪宣告

 

Q・その他に、どのような制度がありますか。

A・行方不明者の生死が一定期間、明らかでない場合に、家庭裁判所の「失踪宣告」により、死亡したものとみなす制度です。
 次の2つがあります。
 (1)普通失踪
  生死不明が7年間続いた場合、失踪宣告により、7年間の期間満了時に死亡したものとみなす。
 (2)特別失踪
  死亡の可能性が高い危難に遭った者が、1年間生死不明の場合に、危難が去った時に死亡したものとみなす。

Q・認定死亡や失踪宣告によって死亡とされた人が、後に、実際に生存が確認された場合はどうなりますか。

A・生存を前提に、死亡認定や失踪宣告が取り消されることになります。
 ただ、それまでに死亡を前提になされた行為の効力については、複雑な問題が生じる場合があります。