2 外国人と相続

第15.2(4)外国人と相続④

第15.2(3)に続いて、日本に長く在住されている韓国籍の方が亡くなられた場合について、解説します。

 

● 特別受益者の相続分(韓国法)

 

Q・被相続人の父より先に亡くなった弟は、結婚するときに父から住宅購入資金の贈与を受けています。
 この場合、弟(その代襲相続人)の相続分に影響はありますか。

A・韓国法では、「受贈財産が自己の相続分に達しないときは、その不足する部分の限度において相続分がある」と定めています。
 日本法でも、婚姻のためもしくは生計の資本などの贈与や遺贈を受けた者は、その分を考慮して公平に相続分を算出するものとされています。
 これを「特別受益者」の「持戻(もちもどし)義務」といいます。
 韓国法も、日本法と同様に「持戻義務」を定めています。
 住宅購入資金の贈与はこの特別受益に当たり、弟(その代襲相続人)には持戻義務が生じるものと考えられます。


 

● 特別寄与分(韓国法)

 

Q・私(被相続人の長男)は、父(被相続人)が介護施設に入居する際の費用や、その後の施設にかかる費用を負担してきました。このようなことは、今回の相続分に影響しますか。

A・韓国法では、「被相続人の財産の維持または増加に関して特別に寄与した者(被相続人を特別に扶養した者を含む)」には、その「寄与分」を補償する「特別寄与分」について定めています。
 日本でも同様の「寄与分」の定めがあります。
 韓国では1990年に相続法の大きな改正があり、この制度が新設されました。
 介護施設にかかる費用負担は、特別寄与分と認められる可能性があります。


 

● 相続放棄(韓国法)

 

Q・被相続人から相続を受けるような財産がなく、逆に多額の負債があるような場合には、相続放棄の手続はできますか。

A・はい。相続開始のあったことを知った日から3か月以内に家庭法院に放棄の申告ができるとされています。
 被相続人が長く日本に居住され、日本で死亡された場合には、日本の家庭裁判所で相続放棄の申述ができると考えられます。
 ただし、相続人が相続財産に対する処分行為を行うなどした場合には、相続を承認したものとみなされるなど、日本法の場合と同様の定めがありますので、注意が必要です。


 

● 遺留分(韓国法)

 

Q・遺留分について、韓国法では定めがありますか。

A・韓国法にも遺留分の定めがあります。
 直系卑属及び配偶者は、その法定相続分の2分の1
 直系尊属及び兄弟姉妹は、その法定相続分の3分の1
 とされています。
 日本法では、被相続人の兄弟姉妹については遺留分を認めていない点で、韓国法とは相違があります。