2 境界

第14.2 境界 (4)境界確定訴訟

● 境界確定訴訟とは

 

Q・「筆界」(ひっかい。1筆の土地の及ぶ範囲を区画する線)の紛争を解決する「境界確定訴訟」とは、どのような制度ですか。

A・筆界を確定するための訴訟、裁判手続です。
 これまで述べたとおり、境界確定訴訟で確定されるのは「筆界」であり、所有権の範囲(所有権界)ではありません。


 

● 筆界特定制度との違い

 

Q・「筆界特定制度」とは、どのような違いがありますか。

A・裁判手続ですので、こちらが原告となって、筆界を争う隣接の土地所有者を被告として、裁判所に裁判を起こす(訴状を提出する)必要があります。
 そのうえで、その裁判手続の中で、原告・被告の双方が、自らが境界と考える位置やその根拠について主張し、あるいは相手方の主張に対し反論を行い、さらに、筆界を確定するための証拠(たとえば、公図や測量図などの図面や、現場の写真、関係者の陳述書などといったもの)を提出します。
 原告・被告双方の言い分を聞いたうえで、最終的に裁判所が、筆界の判断を行います。

Q・筆界特定制度のように、必要な資料の収集や、専門家による現地測量やその他の調査は、裁判所の方でしてもらえないのですか。

A・基本的には、原告・被告各人の責任で行う必要があります。

Q・先に筆界特定制度を利用していた場合には、そこでの資料や判断を、境界確定訴訟の判断資料として利用することはできますか。

A・利用することができます。
 境界確定訴訟では、筆界特定制度で用いられた図面などの記録について、記録を保管している法務局に対して、裁判所へ送付するよう求める制度が設けられています。


 

● 通常の裁判とは異なる点

 

Q・裁判所は、原告・被告いずれの主張が正しいかを判断するのですか。

A・いいえ、必ずしもそうではありません。
 そもそも、境界確定訴訟では、具体的に筆界を特定して訴訟を提起する必要はなく、「甲地と乙地の境界確定を求める」と請求すれば足ります。
 そのため、裁判所は、通常の民事訴訟と異なり、当事者の主張の是非を判断するのではなく、当事者の主張に拘束されずに、筆界を定めることができます。

Q・境界確定訴訟の最中に、当事者間で筆界の位置について合意が成立すれば、和解による解決も可能ですか。

A・いいえ、筆界が公法上の境界であることも踏まえ、境界確定訴訟では、当事者間の合意による解決(訴訟上の和解)は認められておらず、判決による解決しか認められていません。


 

● 筆界特定制度と境界確定訴訟との関係

 

Q・境界確定訴訟の判決には、どのような特徴がありますか。

A・筆界特定制度と異なり、裁判所が行った判断(筆界の確定)に、当事者への法的拘束力が認められ、紛争の終局的解決が図られるという点に特徴があります。

Q・筆界特定制度での判断より、境界確定訴訟の判決の方が優先するのですね。
 そうすると、最初から境界確定訴訟を利用した方がいいのではないでしょうか。

A・必ずしもそうではありません。
 両制度にはそれぞれ特徴があります。筆界特定制度で判断を示してもらうことで解決する紛争も少なくないと思います。
 いずれの制度を利用するかは、弁護士などの専門家とも相談し、事案に応じて適切に判断することが大切です。