2 境界

第14.2 境界 (3)筆界特定制度

● 筆界特定制度とは

 

Q・「筆界」(ひっかい。1筆の土地の及ぶ範囲を区画する線)の紛争を解決する制度として、①筆界特定制度と、②境界確定訴訟とがあるとのことですが、それぞれ、どのようなものですか。

A・まず、「筆界特定制度」は、法務局に所属する「筆界特定登記官」に、土地の筆界を特定してもらう制度です(不動産登記法123条以下)。

Q・筆界特定制度の特徴として、どのような点が挙げられますか。

A・従来、筆界を確定するための制度としては、裁判所に「境界確定訴訟」を提起するしか方法がありませんでした。
 しかし、それだと、裁判を起こす負担が大きく、また、判決までに時間が長くかかることや、専門家である登記官や土地家屋調査士が関与しないことなど、いくつかの問題点が指摘されていました。
 こうした課題を解決するため、平成18年から、筆界特定制度が導入されました。
 筆界特定制度は、
 (a)裁判手続ではなく、行政手続であること
 (b)筆界の専門家が筆界の判断をすること
 (c)簡易迅速な手続きであること
 などの特徴が挙げられます。


 

● 申請方法

 

Q・筆界特定の申請は、どのように行うのですか。

A・土地の所有名義人が、土地の所在地を管轄する法務局に申請します。
 具体的な申請方法については、法務省のホームページに筆界特定申請書の書式等が紹介されていますので、参考にして下さい。

Q・隣地の所有者を相手に、申請するのではないのですか。

A・裁判手続である境界確定訴訟とは異なり、筆界特定制度では、隣地の所有者を相手方として申請するのではありません。


 

● 筆界特定までの手続

 

Q・法務局では、どのように筆界の特定を行うのですか。

A・筆界の特定に必要な資料の収集や調査を、法務局が行います。
 具体的には、法務局や関係行政機関が保管する図面や資料の収集、また、土地家屋調査士等による調査委員が、現地の測量や実地調査、その他の調査を行います。

Q・隣地所有者などは、この手続にはどのように関わるのですか。

A・筆界特定登記官や調査委員が、隣地所有者など筆界に関係する関係者から、事情聴取や意見聴取を行い、資料の提出を受けたり、測量への立ち会いを求めたりする形で、この手続に関与します。

Q・筆界の特定の判断がなされるまでに、どれくらいの時間がかかりますか。

A・おおむね、申請から6か月ないし1年のうちに判断がなされます。
 筆界特定の判断がなされると、筆界特定書が作成されるとともに、対象となる土地の登記記録に筆界特定がされた旨が明記されます。


 

● 筆界特定の効力

 

Q・そうすると、その筆界特定制度を利用すれば、筆界の争いは全て解決することになるのですか。

A・必ずしも、全てが解決するというわけではありません。
 筆界特定制度は、筆界特定登記官の認識(判定)を公に示すものであり、その判断には高い証拠価値が認められます。
 したがって、その判断が示されることで、解決する紛争も多いでしょう。
 しかし、他方で、その判断は、当事者・関係者を法的に拘束するまでの効力はありません。
 法的効力をもって筆界を確定するには、従来どおり、「境界確定訴訟」を提起するほかありません。