3 高齢者の虐待防止

第11.3 高齢者の虐待防止

● 高齢者虐待とは

 

Q・私の隣家の高齢者は、汚れた同じ服を1か月以上も着させられ、ご飯もあまり食べさせてもらっていないようです。
 家族から虐待を受けているのではないかと心配しているのですが、そもそもどういった行為が高齢者に対する虐待となるのでしょうか。

A・高齢者虐待防止法では、以下のような行為が虐待に当たると規定されています。
 ①殴る蹴るなどの行為(身体的虐待)、②劣悪な環境で放置するなどの行為(放任)、③叱りつけたり無視したりする行為(心理的虐待)、④性的な嫌がらせをする行為(性的虐待)、⑤年金を勝手に使ってしまうなどの行為(経済的虐待)
 衣服や食事を満足に与えない行為は、高齢者を放任する行為であり、虐待に当たる可能性があります。

Q・私も85歳の母と同居していますが、時々イライラして八つ当たりしてしまいます。
 高齢者を虐待しないためには、どのようなことが大切ですか。

A・毎日の生活の中でつい怒鳴ってしまうなど、些細なことの積み重ねが、高齢者にとって大きな負担となってしまうことがあります。
 また、高齢者とうまくコミュニケーションが取れないために、知らず知らずの内に高齢者の意思に反した行為をしてしまうケースも多いようです。
 高齢者となるべくこまめに意思疎通を図り、円満な関係を築いていくことが大切です。
 また、介護の負担等が重いと感じている方は、地方自治体の相談窓口に相談するのもよいでしょう。


 

● 通報制度

 

Q・家族から虐待を受けていると思われる高齢者を見つけた場合どうしたらいいでしょうか。
 高齢者やその家族に直接声をかけるのはためらわれるのですが。

A・高齢者虐待防止法では、虐待を受けたと思われる高齢者を発見した者は、速やかに市町村に通報するよう努めるよう規定されています。
 「通報」とは、特別な手続を必要とするものではありません。地方自治体の役所に電話するなどして、担当窓口に状況を伝えることが具体的な通報の方法です。

Q・通報をすると、虐待の状況はどのように改善されるのでしょうか。

A・高齢者の安全確認や情報の収集がされた上で、必要に応じて訪問相談や立入調査が行われます。
 また、高齢者だけでなく、家族など養護者(高齢者を養護している者)の相談にのるといった支援が実施されることもあります。

Q・虐待がないのに間違って通報してしまった場合には、何か責任を負うことになるのでしょうか。

A・いいえ。法律は、虐待を受けたと「思われる」高齢者を発見した方は通報するようにと定めています。ですから、明らかに虐待されているとまでは言えなくても、虐待の疑いがある場合には通報した方がよいでしょう。

Q・通報をしたことが虐待している家族に知れたら、嫌がらせを受けるのではないかと不安です。

A・虐待の有無については地方自治体の職員が調査する場合が多いですが、職員には守秘義務があるので、通報した方の氏名や住所が明らかにされることはありません。
 この点については安心して通報をなさっていただいて結構です。


 

● 弁護士による相談窓口

 

Q・高齢者虐待の問題について弁護士に相談したい場合はどこに連絡すればよろしいでしょうか。

A・各都道府県の弁護士会にご相談下さい。東京の場合は専用の電話相談窓口もございます(電話番号:03-3581-9110)。
 当事務所にもお気軽にご相談下さい。