3 犯罪被害者

第7.3 犯罪被害者 (5)損害賠償命令制度

● 損害賠償命令制度とは

 

Q・友人が街で酔っ払いに絡まれ、暴力を振るわれて怪我をしました。医者からは全治1ヶ月の診断を受け、仕事も2週間ほど休んだそうです。
 加害者は逮捕され、その弁護人から示談の話が来たようですが、提示された金額に納得がいかず、示談はまとまっていないそうです。
 友人が被害を回復するためには、民事裁判を起こすしかないのでしょうか。

A・民事裁判以外に、「損害賠償命令制度」が利用できる場合があります。

Q・それはどのようなものですか。

A・故意に人を死傷させた罪や、性犯罪、誘拐、逮捕監禁の罪など、特定の類型の犯罪で加害者が起訴(公判請求)された場合に、その刑事裁判の成果を利用することによって、より簡易迅速に、被害者が損害の賠償を求めることができる制度です。

Q・加害者の罪名や起訴されたかどうかなどは、どのように調べればいいですか。

A・友人は被害者として、警察や検察庁で事情聴取を受けているはずです。その警察や検察庁の担当者に問い合わせるといいでしょう。

Q・加害者が傷害罪で起訴されて刑事裁判となっていれば、損害賠償命令制度を利用できるのですね。

A・そのとおりです(故意の傷害罪であることを確認して下さい)。


 

● 損害賠償命令の申立の方法

 

Q・その制度を利用するにはどうすればいいですか。

A・刑事裁判が行われている裁判所に連絡をとり、「損害賠償命令の申立」をして下さい。

Q・刑事裁判の結果を確認してから申立をしてもよいのでしょうか。

A・いいえ、刑事裁判が行われている間に申立を行う必要があります。
 刑事裁判は、起訴されて約1ヶ月後に裁判が開かれます。この1回目で裁判が終結する場合も多いので、裁判予定を確認のうえ、早めに申立をして下さい。

Q・申立費用はどのくらいかかりますか。

A・損害賠償請求する金額にかかわらず、一律2000円の申立費用がかかります。
 民事裁判を起こす場合に比べて極めて低額です。


 

● 損害賠償命令の審理

 

Q・損害賠償命令の結論が出るまで、どれ位時間がかかりますか。

A・原則として、刑事裁判の判決言渡日に損害賠償命令の審理(裁判)が始まり、4回以内で審理が終了します。
 通常の民事裁判と比べて、短期間で結論が出ます。

Q・友人は申立にあたって、どのような準備をすればよいですか。

A・傷害行為については、刑事裁判ですでに立証されているので、自分が被った損害に関する主張立証の準備が必要となります。
 例えば、
 (1)治療費、診断書作成費用などの領収書
 (2)休業損害の立証に必要な、給与明細など収入が分かる書類
 (3)慰謝料は、通院期間(入院がある場合は入通院期間)をもとに金額が算定されるので、通院期間が分かる書類(通院期間の記載のある診断書や診療報酬明細書、治療経過が分かるカルテなど)
 (4)衣服や眼鏡などの破損があれば、その修理等にかかった費用の領収書
 などを準備する必要があります。


 

● 損害賠償命令の効果

 

Q・損害賠償命令が出ても加害者が支払ってくれないのではないか心配です。

A・損害賠償命令には民事裁判の判決と同様の効力があります。
 加害者が支払わない場合は、その財産、給与等の差し押さえが可能となります。