4 自己破産

第5.4 自己破産

● 任意整理では返済困難な場合

 

Q・仮に、任意整理で将来利息がカットされたとしても、現在の給料では、自分の生活を維持することが精一杯で、借金の返済に回す金額が確保できないという場合は、どうしたらいいのでしょうか。

A・その場合は、自己破産や個人再生といった、裁判所の手続きを考える必要があります。
 ただし、給料が少ないとしても、高価な車を持っているとか、解約すれば多額の返戻金のある生命保険に加入しているなど他に資産がある場合には、その資産の金額がどれ位になるかを、一度、評価・査定してみる必要があります。


 

● 自己破産

 

Q・自己破産というのは、どういうものでしょうか。

A・裁判所に、まずは借金の返済能力の有無について調査してもらい、返済能力が無いと判断された場合には(破産手続開始決定)、借金の理由や支払不能に陥った原因について調査してもらい、最終的に、借金を支払う責任を免除してもらう(免責決定)、という手続きです。

Q・自己破産には、良いイメージがないのですが。

A・イメージは、決して良いものではありません。
 しかし、多重債務が社会問題化して、自己破産の申立て件数が激増し、一時期は年間20万件もの申し立てがなされていました。今では、生活を立て直すための、必要不可欠な制度となっています。


 

● 自己破産の場合でも、一定の財産は確保できる

 

Q・破産するとすべての財産を失うのでしょうか。当面の生活費は必要ですし、また車が無くなると仕事ができなくなって困る人も多いと思いますが。

A・確かに、自己破産の場合、財産的価値のある物は、裁判所が選任した破産管財人が処分、換価するのが原則です。
 しかし、20万円以下の預貯金は、当面の生活に必要な財産として確保することができます(自由財産)。
 また生命保険も、解約返戻金が20万円以下の場合には、解約等の必要はないとされていますし、車についても、査定価格が20万円以下のものは、換価の必要はないとされています。
 これらの場合は、破産管財人がつかずに、破産手続が進むことになります(同時廃止による手続)。

Q・結構、柔軟な対応をしてくれるのですね。現金も20万円以下なら確保できるのでしょうか?

A・現金は99万円までは自分で確保できるとされています。ただし、20万円を超える現金がある場合は、破産管財人がつく手続き(少額管財事件)となり、裁判所に20万円の予納金を納付する必要がありますので、注意が必要です。


 

● 免責決定

 

Q・自己破産の申立てをすれば、借金の理由がどうであっても、借金を免除してもらえるのでしょうか。

A・例えば、低所得や病気などといった理由で、やむなく生活費に充てるために借金を重ねてしまったといった場合には、特に問題なく免除(免責決定)が得られます。

Q・飲酒やギャンブルといった借金では、免責決定を得るのは難しいということでしょうか。

A・そのような、不真面目な借金の場合には、裁判所は破産管財人をつけて、借金の理由やその後の経過等について調査を行うようにしています。
 裁判所へ予納金を納付する必要が生じますが、最終的には、裁判所は、破産管財人の意見を聞いたうえで、免責決定を下すケースがほとんどとされています。
 借金が免責となることを考えれば、申立てをしてみるべきでしょう。


 

● 免責されない債務に注意

 

Q・自己破産の手続きをすれば、どんな債務も免責となるのでしょうか。

A・どんな債務も、というわけではありません。
 例えば、税金は免責の対象とはなりません。また、故意や重過失で加えた人の生命や身体を害する不法行為に基づく損害賠償責任など、免責の対象とならない債務があるので注意が必要です。