2 遺言の法律問題

第1.2 遺言の法律問題 (1)遺言の方式と特徴

● 遺言の方式

 

Q・私の相続人は、2人の息子のみです。2人は仲が悪く、私の死後、遺産相続でもめないか心配です。
 そこで、遺言を事前に作成しておこうと考えています。
 遺言はどのように作成したらいいのでしょうか。

A・遺言の方式としては、「自筆証書遺言」か「公正証書遺言」の方式で作成するのが通常です。


 

● 自筆証書遺言と公正証書遺言の特徴

 

Q・それぞれどういう特徴があるのでしょうか。

A・まず、自筆証書遺言は、遺言者が自筆で、全文、日付、氏名を自書し、押印(認め印で構いません)すれば、一人でいつでも簡単に作成できる点が大きな特徴です。費用もかかりません。
 公正証書遺言は、公証役場へ行き、公証人の前で、遺言者が遺言の内容を口述し、それを公証人が筆記し、さらに読み聞かせのうえ、遺言者が署名・押印して作成します。
 その際、証人2名以上の立会い、署名・押印が必要です。作成費用は、遺言の対象となる財産の金額によって変わってきます。

Q・自筆証書遺言は、費用がかからないという点が魅力ですね。ただ、短所もあるのではないですか。

A・そうですね。
 まず作成方法ですが、自筆証書遺言の場合、本文、日付及び氏名について自書が必要です。
 パソコンで作成したり、ビデオや録音といった方法で作成することができません。
 ただし、相続財産の目録部分については、自書によらなくても構いません(平成31年1月13日改正法施行)。
 例えば、パソコンで作成したリストや、預金通帳等のコピー、不動産全部事項証明書等を目録として添付することが考えられます。
 もっとも、この場合でも、自書によらない目録部分に署名及び押印は必要です。
 また、署名・押印は1枚ごとに必要で、両面に記載がある場合は両面それぞれにしなければなりません。
 書き損じた場合の訂正の方式も厳格に決められているので、遺言の内容が複雑、多岐、長文にわたる場合には、作成に困難が伴います。
 また、自分一人で作成できる反面、形式の不備で無効となることや、内容が不明確になることも多く、せっかく作成した遺言が、かえって相続人間のトラブルの原因となる場合もあります。
 さらに、作成に第三者が関与していませんので、偽造、変造、隠匿の可能性も高まります。

Q・公正証書遺言の方が、安心な場合が多いということですか。

A・公正証書遺言は、公証人という専門家が作成に関与するので、その有効性や、内容が不明確といったことが問題になることは極めて少なくなります。
 また、偽造や変造、隠匿をされる可能性もありません。
 これが公正証書遺言の最大の長所です。


 

● 秘密証書遺言

 

Q・「秘密証書遺言」というのを聞いたことがあるのですが。

A・あまり利用されていませんが、自分でパソコンなどで作成し署名押印した遺言を封書に入れ、同じ印鑑を使って封印したものを、公証役場に持参し、公証人と2人以上の証人の前で提出して作成するものです。
 全文を自書しなくてよいことに加え、特に、遺言の内容を自分以外の者に秘密にしつつ、その存在を公証人に証明してもらうことができる点が特徴です。
 しかし、自筆証書の場合と同様に、自分一人で作成するため、遺言内容が不明確となるといった問題は残ります。
 また、偽造や変造の可能性こそないものの、保管は遺言者自らで行うので、相続人等に隠匿される危険性が残ります。

Q・それぞれの特徴はわかりました。
多少の費用がかかったとしても、私の場合は公正証書遺言で作成するのがよさそうですね。

A・公正証書遺言にせよ、自筆証書遺言にせよ、大切なのは、「どのような内容の遺言を作成するのか」です。
 せっかく、相続のトラブルを回避するために作成する遺言ですから、いきなり公証役場に行くというのではなく、事前に弁護士などの専門家によく相談し、内容を検討することも大切です。