1 相続

第1.1 相続 (1)相続人・相続割合等

● 相続の発生

 

Q・先日、夫が他界しました。私と夫との間に子供はいません。
夫名義の財産は、自宅の土地と建物、それに預金が少しあります。
遺言はありません。
不動産や預金の名義変更など、どのようにすればいいでしょうか。

A・亡くなられた方(「被相続人」)の遺産(「相続財産」)は、誰が承継するのか。またその割合は。
 法律では、こうした相続に関するルールが定められています。


 

● 相続人の順位

 

Q・夫の遺産は、誰がどのような割合で相続するのですか。

A・一般に、第1順位の相続人は子(直系卑属)、第2順位は親(直系尊属)、第3順位は兄弟姉妹とされています。
 先順位の相続人がいる場合、後順位の者は相続人とはなりません。
 また、この順位とは無関係に、配偶者は常に相続人となります。
 したがって、あなたの夫に子がいない場合には、夫の親が、また親がすでに他界している場合には、夫の兄弟姉妹が、あなたとともに相続人となります。


 

● 相続人の調査

 

Q・夫は再婚で私と結婚しました。夫に子がいないかどうか、どのように調べればいいのですか。

A・夫の現在の戸籍から、出生時までさかのぼったすべての戸籍を調査する必要があります。
 もし前妻との間に子がいたとすれば、その子とあなたとが夫の相続人となります。
 その他、戸籍を調査することで、認知した子が見つかったり、また親が他界していても、高齢の祖父母がまだ生存しているのが見つかったり、交流のない兄弟が見つかったりすることがありますので、丹念に調査する必要があります。


 

● 各相続人の相続分

 

Q・誰が相続人となるかによって、相続分に違いがありますか。

A・子および配偶者が相続人であるときは、相続分はそれぞれ2分の1です(子が複数いる場合には、子の2分の1の相続分を等分に相続するだけで、配偶者の相続分に違いは生じません)。
 また、配偶者および直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は3分の2、直系尊属は3分の1(両親が共に存命の場合には、直系尊属は3分の1の相続分を等分に相続します)、また、配偶者および兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は4分の3、兄弟姉妹は4分の1(兄弟姉妹が複数いる場合には、兄弟姉妹の4分の1の相続分を等分に相続します)、とされています。


 

● 遺産に関する書類を整えよう

 

Q・遺産相続の際、具体的にどのような書類を準備する必要がありますか。

A・不動産については、権利証などをよく参照のうえ、法務局で、現時点の土地・建物の「登記簿謄本」(現在はコンピューター化された「全部事項証明書」となります)や「公図」を取り寄せておく必要があります。
 また、相続登記のために土地・建物の「固定資産評価証明書」を都税事務所や市役所から取り寄せてください。
 相続税を算定するうえでの財産評価の基準となる「路線価」は、国税庁のホームページから調べることができます。

Q・預金や株式などはどうしたらいいですか。

A・銀行や証券会社から、相続発生時点の残高証明書を取り寄せておくとよいでしょう(銀行に貸金庫がないかも確認しておくとよいでしょう)。
 その他、宝石や骨董品といった高級品については、鑑定という方法もありますが、古物商や貴金属商に持って行き、価格を聞いてみると参考になります。

Q・夫名義の住宅ローンや借金も、当然、相続の対象となるのですね。

A・債務として相続の対象となります。
 相続発生時点の借入金残高証明書などを、金融機関から取り寄せておくとよいでしょう。


 

● 妻が受取人の生命保険は、相続財産に含まれない

 

Q・夫が加入し、私が受取人とされている生命保険の死亡保険金も相続財産に入りますか。

A・いいえ、保険金は受取人として指定されている方が取得するもので、相続財産には含まれません。
 ただし、相続税の計算上は、保険金は「みなし相続財産」として、相続財産と同様に算定されます。
 多額の保険金が支払われた場合には、相続税の申告をする必要が生じる場合がありますので、注意が必要です。