4 賃借権・通行地役権の取得時効

第19.4 賃借権、通行地役権の取得時効

● 賃借権の時効取得

 

Q・私は、15年前に土地を賃借し(借地)、建物を建てて居住してきました。
 最近になって、土地の所有者が賃貸人とは別にいるということが判明しました。
 私の借地権は、どうなってしまうのでしょうか。

A・所有権の場合と同様に、賃借権も時効取得できると解されています。
 (1)土地の継続的な用益という外形的事実が存在し、かつ、
 (2)それが賃借の意思に基づくことが客観的に表現されていること、
 (3)それと、時効期間の経過
 が時効取得の要件です。
 借地に建物を建て(継続的な用益)、借地契約書を締結し、地代を払い続けてきた等の事情(賃借の意思)があれば、上記(1)(2)の要件を満たすと考えられます。

Q・時効期間は所有権の場合と同様ですか。

A・そのとおりです。すなわち、賃借を開始した時点で、所有者が別にいることを知らず(善意)、知らないことに過失がない場合(無過失)は10年、他方、所有者が別にいることを知っていたか(悪意)、知らなかったことに過失がある場合(有過失)は20年です。
 あなたの場合は、10年の借地権の時効取得を、土地所有者に主張できる可能性があります。

Q・土地所有者が他に土地を売却してしまった場合、新たな所有者にも、私の借地権の時効取得を主張できますか。

A・借地上の建物の登記がしてあれば、新たな土地所有者にも、借地権の時効取得を主張できます。


 

● 通行地役権の時効取得

 

Q・他人所有の隣地を20年以上も通行しているという場合に、通行権を時効取得するということはあるのですか。

A・民法283条は、通行地役権について、「継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができる」と規定しています。
 ただ、この通行地役権の時効取得が認められるためには、隣地上に、自ら通路を開設して通行しているといった事情が必要とされています。

Q・長年にわたって、事実上通行してきたというだけでは、通行地役権は認められないということですね。

A・そのとおりです。
 ただし、隣地を通行しなければ公道に出られないといった事情がある場合は、いわゆる囲繞地(いにょうち)通行権という通行権が認められる場合がありますので、あきらめないでください。