1 債権の消滅時効

第19.1 債権の消滅時効

● 消滅時効にご注意を

 

Q・親しい友人に頼まれて20万円を貸しました。一度も返済してくれないまま、すでに9年が経過しました。
 もう少し待ってあげようと思いますが、時効で請求できなくなってしまうことが心配です。

A・請求権を有していても、返済のないまま一定年数を経過すると、消滅時効により請求権を失う場合がありますので、注意が必要です。
 個人間の金銭貸借の場合には、返済日から漫然と10年が経過すると請求権は時効消滅してしまいます。


 

● 時効期間の起算日

 

Q・私の場合、借用証書は書いてもらいましたが、いつ返済するかは、特に決めておらず、書いてもありません。
 時効期間の10年は、いつから計算するのですか。

A・返済時期を決めていない場合は、貸借の時から相当期間(社会通念上債務の履行をするのに必要な期間)が経過した時から計算します。


 

● 消滅時効の中断

 

Q・そうすると、私の場合、あと1年ちょっとで時効消滅してしまいます。
 どのように対処したらいいでしょうか。

A・消滅時効を「中断」させなくていけません。
 「中断」の方法として、もっとも手っ取り早いのは、相手に「承認」してもらうことです。
 具体的には、再度、借用の事実を認める一筆を書いてもらうことです。
 返済をもう少し待って下さい、と書いた一筆も、借用の事実が前提となっていますので、「承認」と認められます。

Q・相手から一部でも返済してもらえば「承認」になりますか。

A・その場合には、残額の返済義務を「承認」したことになります。
 その場合、返済の証拠を残しておくため、領収書に残額を明記するなどして、その写しを取っておくと良いでしょう。

Q・書面で相手に請求することで「中断」になりますか。

A・書面で請求しただけでは、完全な「中断」の効果はありません。
 完全な「中断」とするためには、さらに裁判や調停などを提起する必要があります。


 

● 中断後の時効期間

 

Q・消滅時効を「中断」させておけば安心というわけですね。

A・「中断」後は、新たな時効期間の計算が始まりますので、あと10年は消滅時効の心配はありません。


 

● 消滅時効の期間-他の債権

 

Q・同じ金銭の請求権でも、個人間の金銭貸借以外の場合は、消滅時効期間は異なってくるのですか。

A・請求権の種類によって、消滅時効の期間が異なります。
 例えば、
 (1)サラ金など貸金業者の請求権は5年
 (2)会社同士の売買代金債権、学校・塾等の授業料は2年
 (3)ホテル等の宿泊代金、飲食店での飲食代金は1年
 などとなっています。