4 インターネットと刑事罰

第16.4 インターネットと刑事罰

● インターネット上の犯罪

 

Q・インターネットを利用した犯罪にはどのようなものがありますか。

A・詐欺罪、不正アクセス禁止法違反、児童売春・児童ポルノ禁止法違反、わいせつ罪、著作権法違反といった犯罪の検挙数が多く、その他にも、名誉毀損罪や脅迫罪といったものもあります。
 詐欺の手口については、「1 インターネット上の詐欺・悪質商法」でも紹介しましたが、最近は、ネットオークションで物品を購入する方が多く、それに関連した詐欺の手口も増えていますので注意が必要です。
 不特定多数の人を相手に、一方的に情報を発信し、互いに顔を合わすこともないまま、売買等の取引を行う。そのような特徴を悪用する者が存在することを、私たちは常に意識することが大切です。


 

● ネット社会に対応した平成23年の刑法改正

 

Q・平成23年には、サイバー犯罪に対処することを主目的とした法改正がなされました。

A・正当な理由がなくコンピューターウイルスを作成・提供する行為や、わいせつな画像データを不特定多数に電子メールで送信する行為を、処罰する改正が行われました。
 それまでは、こうした行為を直接罰する規定がなかったため、業務妨害罪や器物損壊罪、著作権法違反に問うなどして検挙していました。
 平成23年の改正は、ネット社会に対応したものといえます。


 

● 不正アクセス禁止法違反

 

Q・他者のコンピューターに侵入し、個人情報等を流出させる行為が問題となった事件もよく聞きます。これを取り締まる法律はありますか。

A・いわゆるハッキング行為を取り締まる法律として、不正アクセス禁止法があります。
 不正にネットワークに侵入する行為はもちろんのこと、他人のIDやパスワードを利用してネットワークにアクセスしたような場合にも、この法律違反に問われます。
 近時の個人情報の大量流出事件に象徴されるように、ネット社会では、深刻な結果を引き起こす事例が増えています。
 ハッキング行為等に対する罰則は、今後さらに強化してもらいたいものです。


 

● インターネット上の名誉毀損行為について

 

Q・インターネット上で、掲示板などに他人の名誉を毀損するような書込をした場合にも、新聞や雑誌など従来の媒体と同様に、名誉毀損罪(刑法230条)が成立するのですか。

A・インターネット上であっても、名誉毀損罪が成立します。
 また、その犯罪が成立するための要件(構成要件)も、他の媒体の場合となんら変わりません。
 名誉毀損罪の場合、被告人側が、問題となっている事実摘示について、その内容に公共性、公益性があり、かつ真実であるか、もしくは被告人がその事実を真実と信じたことについて相当性がある場合でなければ、名誉毀損罪の成立を免れることはできません。


 

● インターネット上の著作権法違反について

 

Q・インターネットを利用した著作権法違反とはどのようなものですか。

A・例えば、他人のホームページに書かれていた記事を、自分のホームページに無断で転載していたとして逮捕されたケースがあります。

Q・面白い記事や参考になる記事はブログで紹介するようなことは、著作権法違反に該当してしまうのでしょうか。

A・単に記事を貼り付けただけというような場合は、著作権法違反となります。
 著作権法違反にならないよう、記事の著作権者から了承を得るか、著作権法上許される「引用」の形で記事を紹介する必要があります。
 「引用」は、公正な慣行に合致し、かつ、報道、批評、研究等、引用の目的上正当な範囲内で、出典を明示した上で行わなければなりません。