2 外国人と相続

第15.2(1)外国人と相続①

相続の問題は、国ごとに様々な定めがされ、とても複雑で難しい問題です。代表的な問題を具体的なケースに基づき解説します。

 

● 亡くなった人が日本人の場合

 

Q・私は外国人女性です。日本人男性と結婚し日本で生活をしていましたが、夫が亡くなりました。
 私が夫の遺産を相続できるか否かは、どこの国の法律で決まりますか。

A・相続に関しては「被相続人の本国法」によるとされています。
 「被相続人」というのは「亡くなった人」のことを指します。
 被相続人が日本人の場合、相続に関しては日本の法律によります。
 日本の法律上、配偶者は相続人となるため、あなたは、ご主人の遺産を相続できます。


 

● 配偶者が原則相続人にならない国もある

 

Q・日本の法律では「配偶者は相続人になる」とされていますが、配偶者が相続人にならないという定めをしている国はあるのですか。

A・あります。
 例えば、フランスでは配偶者は原則として相続人になりません。
 フランスでは、被相続人の「子」や「兄弟姉妹」が配偶者よりも優先されます。
 そのため、配偶者は、被相続人に子や兄弟姉妹がいない場合など、一定の要件を満たした例外的な場合でないと相続人になりません。
 被相続人がフランス人の場合にはこの点に注意をする必要があります。


 

● 亡くなった人が外国人の場合でも日本の法律による場合の例

 

Q・私は、スイス人の父と日本人の母の間に生まれ、両親とともに日本で生活をしていましたが、父が亡くなりました。
 相続に関しては「被相続人の本国法」によることからすると、私が父の遺産を相続できるか否かは、スイスの法律によって決まるのですか。

A・いいえ、この場合には日本の法律によって決められます。

Q・それはどうしてでしょうか。

A・たしかに、被相続人であるあなたのお父さんはスイス人ですので、まずはスイスの法律を見ることになります。
 スイスの法律では、相続に関しては「被相続人の住居地法」によるとされています。
 あなた方は日本で生活をしており、お父さんの住居地は「日本」であるため、お父さんの相続に関しては日本の法律によることになります。
 日本の法律上、子は相続人となるため、あなたはお父さんの遺産を相続できます。


 

● 不動産と動産で扱いが異なる国がある

 

Q・私は、アメリカ人の父と日本人の母の間に生まれ、両親とともに日本で生活をしていましたが、父が亡くなりました。
 父の遺産は、
 (A)日本国内の土地建物と、
 (B)アメリカ国内の土地建物があります。
 これらの遺産はどこの国の法律によって分けることになりますか。

A・アメリカやイギリスなど世界の国の中には、遺産のうち「不動産」と「動産」とで異なる取り扱いをする国があります。
 これらの国においては、「不動産」は「その不動産が所在する国」の法律を適用するとされています。
 (A)日本国内の土地建物は、「日本」の法律により、
 (B)アメリカ国内の土地建物は、「アメリカ」の法律によります。

Q・父がアメリカ国内に車を持っていた場合、どこの国の法律によって車を分ければいいでしょうか。

A・「不動産」と「動産」とで異なる取り扱いをする国においては、車などの「動産」については、国によって定め方が異なり、大別して
 (a)被相続人の「本国法」とする国(ルーマニアなど)
 (b)被相続人の「住居地法」とする国(アメリカやイギリスなど)
 に分かれます。
 被相続人がアメリカ人の場合、「被相続人の住居地」の法律によります。
 あなた方は日本で生活をしており、お父さんの住居地は「日本」であるため、アメリカ国内に車があったとしても、「被相続人の住居地」である「日本」の法律によることになります。

このように、相続に関しては各国の法律を確認する必要がありますので、ご注意下さい。