2 境界

第14.2 境界 (5)所有権確認訴訟

● 所有権界が問題となるケース

 

Q・筆界(ひっかい。1筆の土地の及ぶ範囲を区画する線)とは別に、所有権界(所有権の及ぶ範囲)が問題となるのはどのようなケースですか。

A・例えば、長年、自分の土地だと思って使ってきた範囲の土地が、実際には筆界とは異なっていたという場合、所有権界の問題となります。
 自分の土地だと思っていた理由については様々にあると思いますが、仮に、そこが実は他人の土地だったという場合でも、10年や20年にもわたって自分の土地として使用してきた場合には、所有権の時効取得が認められる場合があります。

Q・その所有権を確定させるためには、筆界特定制度や境界確定訴訟とは別に、所有権確認訴訟による必要があるのですね。

A・そのとおりです。


 

● 所有権確認訴訟とは

 

Q・所有権確認訴訟とは、どのようなものですか。

A・裁判手続であるという点は、境界確定訴訟と同じです。
 こちらが原告となって、その所有権を争う者を被告として、裁判所に裁判を起こす必要があります。
 その裁判手続の中で、原告・被告の双方が、自らに所有権があるとする範囲の土地を特定し、その理由、根拠について、互いに主張・反論を戦わせ、証拠を提出することになります。

Q・境界確定訴訟では、当事者間の合意による解決(訴訟上の和解)は認められないとのことでしたが、所有権確認訴訟ではどうですか。

A・所有権確認訴訟の場合は、通常の民事訴訟の一つですので、当事者間で所有権界についての合意をすること(訴訟上の和解)も可能です。

Q・判決の効力については、境界確定訴訟と所有権確認訴訟とでは、何か違いがありますか。

A・境界確定訴訟は、公法上の筆界を確定させる制度であり、その判決の効力は、裁判手続に関与しなかった第三者にも及びます。
 これに対し、所有権確認訴訟は、通常の民事訴訟ですので、その判決の効力は、訴訟の当事者(原告と被告)など、訴訟に関与した人にしか及びません。


 

● 境界確定訴訟と所有権確認訴訟との関係

 

Q・所有権確認訴訟での判決や、訴訟上の和解の結果は、筆界には何も影響しないのですか。

A・影響しません。

Q・境界確定訴訟の判決が出た後に、新たに所有権確認訴訟を提起することはできますか。

A・できます。
 これまで見てきたとおり、境界に関する争いの内容は様々です。証拠の存否などとも照らし合わせて、専門家ともよく相談の上で、適切な解決制度を用いることが大切です。