法律相談Q&A 
4 ハラスメント問題

第8.4 ハラスメント問題 (8)パワーハラスメント④

● パワハラと労災

 

Q・労働者が職場でパワハラの被害に遭った場合は、パワハラを行った社員や会社に対する損害賠償請求の他に、どういった法的手段をとることができるのでしょうか。

A・パワハラが原因でうつ病等の精神障害を発症した場合や、その結果、自殺に至ってしまったという場合に、労働者災害補償保険法(いわゆる労災保険法)に基づいて、国から各種の保険給付を受けられるという例があります。

Q・労災保険の給付が受けられるのは、どのような場合ですか。

A・厚生労働省は、次のような要件をみたす場合に労災を認定すると定めています。
 (1)認定基準の対象となる精神障害(※)を発症していること
 (2)認定基準の対象となる精神障害の発症前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること
 (3)業務以外の心理的負荷や個体側要因(既往歴やアルコール依存状況など)により発症したとは認められないこと
 ※世界保健機関(WHO)が公表している国際的な統計基準に該当する様々な精神障害のこと。パワハラに起因する代表的な精神障害としては、うつ病や急性ストレス反応などが挙げられます。

Q・(2)の「業務による強い心理的負荷」が認められるかどうかは、どうやって判断されますか。

A・この点については、さらに詳細な基準が定められています。
その基準の内容を簡単に説明すると、業務により生じる出来事を具体的に類型化し、どの出来事に当てはまるかに応じて、心理的負荷の強度を「強」「中」「弱」の三段階に区分するというものです。
 総合評価が「強」と判断される場合には、「業務による強い心理的負荷」が認められることになります。
 この基準はインターネット上で公表されているので、参照してみるといいでしょう。
 (http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001z3zj-att/2r9852000001z43h.pdf
 基準を見てみると、「ひどい嫌がらせ、いじめ、または暴行を受けた」という項目に該当する場合は、心理的負荷が「強」とされています。(上記URL先の16ページ参照)
 このような項目に該当する例として、
 「部下に対する上司の言動が、業務指導の範囲を逸脱しており、その中に人格や人間性を否定するような言動が含まれ、かつ、これが執拗に行われた」
 「同僚等による多人数が結託しての人格や人間性を否定するような言動が執拗に行われた」
 「治療を要する程度の暴行を受けた」
 というものが挙げられています。
 これらはまさしくパワハラに該当するような行為といえます。


 

● 労災申請手続

 

Q・労災の申請手続は、どうやって行えばいいですか。

A・労働基準監督署に請求書を提出して行います。
通常は、会社が手続をしてくれるという例が多いですが、自分でも申請することができます。
 ただし、労災病院や労災保険指定病院での治療中に、療養費用の給付請求をする場合については、病院の窓口を経由して請求書を提出することになります。

Q・自分で申請する場合、会社から何か書類を入手しておく必要はありますか。

A・請求書には、事業主に住所地や氏名を記入してもらう欄があるので、この欄に記入してもらう必要があります。これを事業主証明といいいます。

Q・会社がパワハラの事実を認めてくれず、事業主証明を拒否されてしまったら、労災申請はできないのでしょうか。

A・事業主証明がなくても、労基署は請求書を受理してくれます。その場合、労基署は会社に対して、証明を拒否する理由を書面で提出させることになります。

Q・労災申請はいつまでに行えばいいですか。

A・労災保険給付を受ける権利は、給付の種類に応じて、2年または5年で時効により消滅することとされています。
 できるだけ早めに請求しておくことが望ましいといえます。