法律相談Q&A 
4 ハラスメント問題

第8.4 ハラスメント問題 (7)パワーハラスメント③

● パワハラと業務上の指導の境目

 

Q・上司の部下に対する叱責がパワハラに当たるのか、それとも業務上の指導にとどまるのかということは、どのように判断されるのでしょうか。

A・上司の部下に対する叱責が「業務の適正な範囲」を超えたときは、その行為はパワハラに該当すると判断されます。

Q・「業務の適正な範囲」という言葉だけを聞いても、具体的にどんな行為がその範囲を超えるのかはイメージしづらいですね。
 実際に、業務の適正な範囲内かどうかが争われた裁判例にはどのようなものがありますか。

A・上司の行為が業務の適正な範囲かどうかが争点となり、結論として上司の行為を違法なパワハラだと判断した裁判例としては、
 (1)休暇を取る際の電話の掛け方といった軽微な過誤について執拗に始末書を提出するよう求めるなどした事例
 (2)何度も反復継続して、「もうあんた、いらないよ」「もう辞めてくれない」「性格直しな」などと仕事内容以外の事情も含めて悪感情をぶつけ、退職を迫った事例
 (3)病気治療により長期間休職した後に復職した部下が業務上のミスを繰り返したことに対し、厳しい口調で、「辞めてしまえ」「あほ」などと言ったり、他の従業員を引き合いに出して「お前は○○以下だ」といった表現で頻繁に叱責した事例
 などがあります。
 これらは、執拗に行為を繰り返した事例や、表現が過激な事例です。

Q・逆に、上司の指導を「業務の適正な範囲」内だとした裁判例にはどのようなものがありますか。

A・そのような裁判例としては、
 (4)仕事中の居眠りや、勤務時間中の喫煙目的での外出、顧客への電話対応等について注意をした上司の行為について、しつこく注意したものではなく、部下の立場に配慮しながら言葉を選んで注意したものであり、威圧的でも嫌がらせ目的でもなかったとして、違法性を否定した事例
 (5)上司が部下に不正経理をやめるよう指導したところ、約1年が経過した後も、その部下が不正経理を続けていたため、他の従業員も見ている前で厳しく叱責したという場合に、上司の叱責は業務上の指導の範囲を超えるものではない、と判断した事例
 (6)病院の健康管理室に配属された部下がミスを繰り返したため、時には厳しい指摘・指導や物言いをしたことがあっても、それは生命・健康を預かる職場の管理職が当然にすべき業務上の指示の範囲内にとどまるとして、違法性を否定した事例
 などがあります。


 

● パワハラだと判断されないために気を付けるべきポイント

 

Q・パワハラだと判断されないために気を付けるべきポイントはありますか。

A・(4)の事例は、部下への指導を行おうと思っている上司にとって、パワハラだと判断されないためにはどうすべきかという観点でみると参考になります。
 たとえ部下に対する指導が必要だと判断される場合でも、執拗な態様とならないよう注意すること、相手の立場に配慮すること、言葉の選び方に注意すること、威圧的な言動を取らないことなどに留意して、パワハラの問題を起こさないよう気を付けるべきです。