3 労働契約法の改正

第8.3 労働契約法の改正 (4)「雇止め法理」の法定化

● 雇止め法理の法定化

 

Q・有期労働契約の無期労働契約への転換、不合理な労働条件の相違の禁止、以上の他に労働契約法のどのような点が改正されましたか。

A・「雇止め法理」が条文化されました。
 「雇止め」とは、期間の定めのある有期労働契約において、契約期間の満了時に、使用者が契約を更新せず、労働者を辞めさせることをいいます。

Q・契約期間が満了したわけですから、それ自体は仕方ないことですね。
 でも、次の職を探すことも大変な場合があるので、急に雇止めを宣告されると困ってしまいますね。

A・その通りです。
 そこで、これまでの裁判例では、労働者保護の観点から、一定の場合に、雇止めが無効になるとされてきました。
 このような考え方を「雇止め法理」といい、労働契約法の改正により、そのことが条文化されました。


 

● 雇止めが認められない場合

 

Q・労働契約法では、どのように定められているのですか。
A・労働契約法では、
 過去に反復して更新されたことがある有期労働契約の雇い止めが、無期労働契約の解雇と同視できるような場合
 もしくは、
 労働者において、有期労働契約の満了時に、その有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められる場合
 について、労働者から有期労働契約の更新の申込みを使用者は拒絶することはできないとされています。

Q・更新の申込みについて、所定の方式があるのでしょうか。

A・特にありません。
 使用者からの更新拒絶の申し出に対して、労働者が拒絶の意思を示した場合なども、更新の申込みであるとされています。

Q・有期労働契約は、何度か更新されてないといけないのですか。

A・必ずしもそうとは限りません。
 過去の判例では、最初の期間満了時における雇止めであっても雇止めが無効になる場合があるとされたものがあります。
 労働者において、雇用継続の期待が強く、その期待が合理的なものであれば、雇止めは認められません。

Q・どのような場合に、雇用継続に対する期待が合理的なものとされるのですか。

A・労働契約のスタート時から、契約期間の満了時まであらゆる事情を総合考慮して判断されます。
 先ほどの過去の判例では、契約期間1年の臨時の雇用について、その会社の制度創設以来、自己都合退職の者以外には、雇用が継続されており、正社員に欠員が出たときには正社員に登用されてきたという事情が重視されました。
 業務内容が臨時的なものではなく常用的なものであるか、使用者の側で継続的な雇用を期待させる言動・制度の有無、契約更新の回数などの事情を考慮して、雇用継続に対する期待が合理的なものか否か判断されます。
 個別の事案ごとに、あらゆる事情を総合的に考慮されて、判断されますので、意に沿わない雇止めにあった場合は、早めに専門家に相談した方がよいでしょう。