1 労働問題一般

第8.1 労働問題一般 (1)賃金①<残業代等>

● 「所定労働時間」「法定労働時間」を超す残業代

 

Q・私は月曜から金曜までの平日勤務で、就業時間は午前9時から午後5時、途中1時間の休憩があるので、1日7時間勤務です。
 最近、従業員の数が減った分、残業を命じられることが多くなりました。残業代は、どのように計算されますか。

A・労働契約や、就業規則等で定められた労働時間を「所定労働時間」といいます。この所定労働時間を超える労働に対しては、当然に賃金の請求ができます。
 また、「法定労働時間」(原則1日8時間、1週間40時間)を超す労働に対しては、割り増しした賃金を請求することができます。

Q・平日は午後8時まで残業することも少なくありません。この場合の残業代は幾らになりますか。

A・あなたの所定労働時間7時間を超過した3時間分の賃金を請求できますが、その3時間のうち、法定労働時間(1日8時間)を超す2時間分は、割増賃金を請求できます。
 まとめると、この場合、「割増のない賃金1時間分」+「割増賃金2時間分」が残業代となります。
 ※但し、フレックスタイム制や、変形労働時間制、みなし労働時間制等がとられている場合には、労働時間の計算が異なります。


 

● 割増賃金はどれくらい?

 

Q・法定労働時間を超えて残業した場合は、どれくらい割増されるのですか。また、休日出勤や深夜労働の場合はどうですか。

A・割増賃金は次のとおりとされています。
 (1)法定労働時間を超す残業代は25%以上
    なお、1か月の時間外労働が60時間を超す場合、「大企業」においては、50%以上の割増賃金を請求できる場合があります。
 (2)休日(法定休日)出勤の場合は35%以上
    但し、ここでいう休日とは、就業規則等で定められた、労働基準法上の、週1日または4週4日の「法定休日」をいいます。土曜日や国民の祝日は、必ずしもこの休日には当たりません。
 (3)午後10時から翌日午前5時までの深夜労働の場合は25%以上
 上記(1)ないし(3)の事由が複合する場合は、各割増分が合算となります。
 (上記時間外労働や休日労働は、予め、使用者が労働者側と協定し、それを労働基準監督署に届け出ておく必要があります)


 

● 1時間の賃金の計算方法

 

Q・私は時給ではなく、月給をもらっています。この場合、1時間分の給料はどのように計算しますか。

A・「(基本給+諸手当)÷1か月の平均所定労働時間」で1時間あたりの賃金を計算します。
 但し、次の手当は、上記の「諸手当」に含まれません。
 ①家族手当、②通勤手当、③教育手当、④別居手当、⑤住宅手当、⑥臨時に支払われた賃金、⑦1か月を超える期間で支払われる賃金


 

● 残業を命じられていない場合、残業代は請求できない?

 

Q・残業は命じられないのですが、多くの仕事をこなすために、やむをえず残業をしたような場合でも、残業代は請求できますか。

A・賃金が支払われる労働時間にあたるかどうかは「使用者による指揮命令下に置かれた」ものであるかが基準となります。
 残業の指示があった場合は、当然これにあたりますが、指示がないのに自主的に残業した場合には、指揮命令下に置かれたとはいえません。
 しかし、所定労働時間内には処理を終えることが困難な仕事を上司から命じられ、やむなく残業せざるをえなかったような場合には、黙示の残業指示命令があったと認められる場合があります。


 

● 未払いの残業代は過去何年分まで請求できる?

 

Q・未払いの残業代は、過去何年分まで請求できますか。

A・賃金の消滅時効は2年ですので、過去2年分を請求することができます。