法律相談Q&A 
2 少年の刑事事件

第7.2 少年の刑事事件 (3)少年審判の手続きについて

● 家庭裁判所調査官による調査

 

Q・家庭裁判所に送致された後の調査は、どのように行われるのですか。

A・家庭裁判所の調査官による調査が行われます。
 調査官は、少年につき、保護者との関係、境遇、経歴、教育の程度・状況、非行の経緯、性格や行動、心身の状況、また今回起こした事件の内容等を、少年や保護者等との面接、また関係機関からの聴取、資料収集等により、調査を行います。

Q・観護措置(少年鑑別所への入所)がとられた場合も同様ですか。

A・観護措置がとられた場合には、少年鑑別所で、鑑別技官による専門的な検査等が行われます。それと並行して、家庭裁判所の調査官も調査を行います。
 調査官は、少年鑑別所の検査結果等も踏まえて、少年にとってどのような処分等(「処遇」といいます)をすることが有効・適切なのかを検討することになります。


 

● 調査結果を踏まえて、少年の処遇が決まる

 

Q・調査官による調査結果は、少年の処遇にどう影響するのですか。

A・調査官が作成した調査報告書と、処遇についての意見書が、少年の処遇を決める上で、最も重要な資料になります。
 それら調査結果を踏まえて、家庭裁判所の審判官(裁判官)が、
 (1)少年に対し、「審判」を開始するかどうか、
 (2)審判を開始したとして、「保護処分」に付すかどうか、
 (3)保護処分に付すとして、どのような処分に付すか、
 等を判断することになります。


 

● 家庭裁判所での判断

 

Q・審判が開始されない場合もあるのですか。

A・軽微な事案などで、家庭裁判所での調査の結果、審判に付することが相当でないと認めるときは、審判を開始しない決定をします。
 他方、調査の結果、その罪質及び情状に照らして、刑事処分が相当と認めるときは、検察官に送致する決定がなされる場合があります。

Q・審判が開始したとしても、保護処分に付されない場合があるのですか。

A・罪状が比較的軽い事案の場合には、保護処分に付すまでの必要がないとして、「不処分」の決定をする場合があります。

Q・審判によって保護処分に付される場合、どのような処分がありますか。

A・「保護観察」「少年院送致」「児童自立支援施設または児童養護施設送致」の3つがあります。
 また、これら保護処分を決定するにあたり、相当な期間、「試験観察」に付す場合があります。
 これらについては,後に詳述します。


 

● 審判の手続き

 

Q・少年審判は傍聴することができますか。

A・少年審判は非公開で行われますので、一般の人は傍聴できません。

Q・どういう人が審判に立ち会うことができますか。

A・少年の「保護者」及び弁護士などの「付添人」が立ち会います。
 その他、保護者以外の親族や学校の教師が、裁判所の許可を受けて審判に立ち会う場合があります。

Q・審判では、少年や保護者は、どのようなことを聞かれるのですか。

A・審判では、少年に非行の内省を促すことが大切です。
 審判官(裁判官)が、事件のことや生活状況等について、少年や保護者等から事情を聞くとともに、意見を述べさせて、少年・保護者等の問題点を指摘していきます。


 

● 中間的な処分である「試験観察」

 

Q・「試験観察」というのはどのようなものですか。

A・家庭裁判所が、少年に適した保護処分を決定するために必要がある場合に、相当な期間、調査官の観察に付すことをいいます。
 特に、保護処分である「保護観察」と「少年院送致」とでは、処分の内容にかなり隔たりがあるので、いずれにすべきかを決めかねる場合などに、この「試験観察」が利用されることが多いようです。


 

● 「観察」はどのように行われる?

 

Q・試験観察に付された場合、どこかの施設に収容されるのですか。

A・試験観察には、「在宅試験観察」と「補導委託」の2種類があります。
 「在宅試験観察」は、少年が「自宅などの居住先」で生活をしながら、調査官の観察を受けることになります。
 他方、「補導委託」は、少年が「家庭裁判所が指定する補導委託先」で生活をしながら、調査官の観察を受けることになります。
 補導委託の場合、委託先は、家庭裁判所に登録された民間ボランティアで、更生保護施設や自立援助ホームなどの施設の場合もあれば、第三者の個人の家庭という場合もあります。

Q・家庭裁判所調査官の観察はどのように行われるのですか。

A・調査官が、定期的に、少年と面接を行うほか、少年の親や学校・補導委託先の責任者などと面接をしたり、少年に日記を書いてもらったり、少年にボランティアに参加してもらい、その様子を見たり、といった方法によって、観察を行います。


 

● 試験観察の期間

 

Q・試験観察はどのくらいの期間、行われるのですか。

A・事件ごとに異なります。
 数ヶ月の場合もあれば、1年以上に及ぶ場合もあります。
 試験観察期間が終わると、その観察結果を基に、審判官(裁判官)が、少年に適すると判断した保護処分を決定します。


 

● 保護処分としての「保護観察」

 

Q・「保護観察」とはどのようなものですか。

A・少年を、少年院などの施設に収容するのではなく、家庭に戻し、普通の社会生活を行う中で改善・更生を図る保護処分です。
 具体的には、主に保護司が少年と定期的に面接などを行い、保護観察中に守るべき事柄(遵守事項)を遵守して生活をしているどうかを定期的に指導・監督していくことで、少年の改善・更生を援助します。


 

● 保護観察中の遵守事項

 

Q・保護観察中の遵守事項には、どのようなものがありますか。

A・「一般遵守事項」と「特別遵守事項」とがあります。
 「一般遵守事項」とは、健全な生活を送ること、保護司などの指導監督を誠実に受けることなどで、保護観察の処分を受けた人すべてに共通する遵守事項です。
 「特別遵守事項」とは、少年が犯した非行内容や、少年の資質などに応じて定められるものです。
 例えば、学校に通学することを条件としたり、犯罪や非行につながるような場所への出入りを禁止したりといったことが挙げられます。

Q・遵守事項を守らなかった場合には、どうなりますか。

A・不遵守の程度が重大であるなど一定の要件に該当する場合には、少年院送致などの処分をします。
 保護観察は、社会生活のルールの中で更生を行っていくものですので、遵守事項はきちんと遵守していくことが大切です。


 

● 少年に対する指導・監督を担う「保護司」

 

Q・保護司というのはどのような人なのですか。

A・保護司法という法律に定められた一定の要件(社会的信望を有すること、職務遂行の熱意・時間的余裕を有することなど)を満たした人の中から、選任を受けた、非常勤の国家公務員です。
 国家公務員ですが、俸給(給料)は支払われないため、実質的にはボランティアです。


 

● 保護観察の期間

 

Q・保護観察はどれくらいの期間、行われるものですか。

A・原則として、少年が20歳になるまでです。
 ただ、改善・更生の状況が良好であるなど保護観察を継続する必要がなくなった場合には、20歳になる前に保護観察が解除されることがあります。


 

● 保護処分としての「少年院送致」

 

Q・「少年院送致」はどのような場合にされるのですか。

A・少年院送致は、保護処分のうちで最も強力な処遇です。非行がある程度進んでおり、施設に収容して矯正教育を行わなければ更生することが困難であると判断された場合に、少年院送致の決定がされます。


 

● 少年院での処遇

 

Q・少年院にはどれくらいの期間行くことになるのですか。

A・少年への処遇内容によって異なります。
 処遇は、大きく分けて「長期処遇」と「短期処遇」があり、短期処遇はさらに「一般短期処遇」と「特修短期処遇」に分かれます。
 収容期間は、
 長期処遇は「2年以内(通常は1年程度)」
 一般短期処遇は「6か月以内」
 特修短期処遇は「4か月以内」
 とされています。
 なお、長期処遇と一般短期処遇については、期間が延長されることがあります。

Q・長期か短期かなどは、どのようにして決まるのですか。

A・非行の傾向・程度、少年の問題性、早期改善の可能性等を総合的に考慮して決定されます。
 一般短期処遇は、
 非行の傾向がある程度進んでいるが、少年の持つ問題性が比較的軽度で、早期改善の可能性が大きい場合です。
 特修短期処遇は、
 一般短期処遇の対象者よりも非行の傾向が進んでおらず、少年の持つ問題性が比較的軽度で、早期改善の可能性が大きい場合です。
 長期処遇は、
 上記で述べた短期処遇にはなじまない場合です。


 

● 少年院での教育内容

 

Q・少年院ではどのようなことをするのですか。

A・個々の少年の問題性及び長所等を明らかにして、心身の発達状況、資質、将来の生活設計等を検討して処遇計画を策定します。
 中学・高校で行うような勉強をしたり、将来の希望進路によってはその職業上必要な知識や技能等を勉強します。
 また、社会生活に適応するための指導も行われます。
 少年院では、余暇を善用する習慣を養い、情操を豊かにするために、運動、競技、音楽、演劇その他のレクリエーションを励行するとされており、運動会や文化祭、季節毎の催し物等が開催されます。
 そして、被害者の気持ちを理解するために、犯罪被害者等を講師として招き、講話やロールレタリング(少年が加害者と被害者双方の立場に立って手紙を書く)が行われることもあります。


 

● 少年院の退院

 

Q・退院はどのように決まるのですか。

A・少年が予定された矯正プログラムを終了した場合に退院が許されます。
 少年院の退院は、法務省の地方支分部局の1つである地方更生保護委員会が、少年院長の申出に基づき決定をします。
 なお、矯正プログラムの途中であっても、極めて良好な評価の場合には、仮退院の決定がされることがあります。
 仮退院後、その少年は保護観察に付されます。


 

● 家庭裁判所による「検察官送致」

 

Q・「検察官送致」はどのような場合にされるのですか。

A・死刑、懲役、禁錮にあたる罪の事件について、家庭裁判所が調査の結果、犯罪の性質や情状などに照らして、少年に対して、これまで述べたような「保護処分」ではなく、「刑事処分」をすることが相当であると認めた場合です。
 また、次の場合は、検察官送致が原則となります。
 ①たとえば殺人罪や傷害致死罪、強盗致死罪など、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件で、犯罪時に16歳以上の場合
 ②連座制に係る事件のうち,選挙の構成の確保に重大な支障を及ぼす事件で、犯罪時に18歳以上の場合


 

● 検察官送致後はどうなる

 

Q・「検察官送致」をされると、その後はどうなるのですか。

A・検察官は、犯罪性があると認める場合(犯罪の嫌疑がある場合)、原則として起訴しなければなりません。これを「起訴強制」といいます。
 起訴されると、大人と同じように刑事裁判を受けることになります。


 

● 起訴後の処遇

 

Q・刑事裁判の審理の結果、犯罪を行ったこと自体に争いがないようです。その場合、懲役、禁錮等の刑罰に処せられるのですか。

A・はい。
 (例外的に、裁判所が少年には保護処分が相当と認めたときは、再度、事件が家庭裁判所に移送される場合があります)
 ただし、少年は人格形成の途上にあり、適切な教育や処遇により更生することが大きく期待できます(これを「可塑性(かそせい)」といいます)。そのため、少年に対しては特別な配慮がなされています。

Q・どのように配慮されているのですか。

A・例えば、
 (1)犯行時18歳未満であった者に対しては、死刑をもって処断すべきときは、無期刑を科するものとされており、また、無期刑をもって処断すべきときでも、有期懲役または禁錮を科することができるとされています。
 (2)また、判決言い渡し時に少年である者に対する処断刑が、長期3年以上の有期懲役または禁固刑の場合は、短期5年以下、長期10年以下の範囲で「不定期刑」を言い渡すものとされています。
 ※成人であれば「懲役○年」と言い渡されるのが、少年の場合は「懲役○年以上、○年以下」と言い渡されます。

Q・懲役または禁錮の言い渡しを受けた少年は大人の受刑者と同じ施設に収容されるのですか。

A・いいえ。
 少年に対する刑の執行は、少年刑務所(全国に7か所あります)、または、通常の刑務所の中に、特に分界(区切り)を設けた場所で行われます。
 これは、少年は環境の影響を受けやすいことに配慮したものです。