2 子どもの問題

第4.2 子供の問題

● 親権者は、子供の利益・福祉を基準に決める

 

Q・未成年の子供がいる夫婦が離婚をする場合、親権者は、どのような点を考慮して決めるのですか。

A・親については、経済力、今後の居住環境、心身の健康・性格、子に対する愛情、監護補助者(親族など)の援助体制の有無といった事情を、また、子の側については、子の年齢、心身の状況、子の精神の安定(親に対する感情、交友関係、学校関係等)、子の意思といった事情です。
 これらを総合的に考慮して、どちらが親権者となることが、子供の利益となり福祉にかなうかという観点から決めるべきでしょう。
 ちなみに、離婚訴訟では、子供が幼い場合、裁判所は母親を親権者として指定する例が多いようです。


 

● 養育費の取り決めは書面で

 

Q・前回のお話では、未成年の子供がいる夫婦の離婚では、協議離婚の前に、養育費についても予めよく話し合っておくべきと言われていましたが、養育費の金額や支払方法等はどのように決めるのですか。

A・お互いの収入や資産、これまでどれ位の金額を養育費としてかけてきたか、今後の子供の進路の見通し等を考慮して、各人が毎月幾らを負担するのか、まずは夫婦でよく話し合って下さい。
 母親が親権者となる場合は、養育費についての合意内容を書面化して、夫に署名捺印してもらうことが必要です。
 ただし、私的な文書だけでは、将来不払いになった場合、あらためて裁判所の手続をとる必要が生じますので、できれば最寄りの公証役場へ2人で行って、裁判なしで強制執行ができる「公正証書」を作っておくことが望ましいでしょう。


 

● 養育費の目安

 

Q・お互いの収入をもとに養育費の負担を決める場合、何か目安となるものはありますか。

A・家庭裁判所が、子供の人数、年齢、また、双方の親の収入に応じた養育費負担額の算定表を作成していますので、参考にして下さい。
 この表は、東京家裁のホームページで見ることができます。


 

● 養育費の金額はケースバイケース

 

Q・小学生の子供2人を母親の私が育てる場合、夫からもらう養育費はいくらになりますか。
夫はサラリーマンで年収が約600万円、私はパートで年収が約100万円です。

A・裁判所の算定表によれば、子供2人分の養育費として月額8万円~10万円とされています。
 ただ、あくまで目安であって、夫婦ごとにケースバイケースでしょう。


 

● 公正証書や調停調書があれば強制執行できる

 

Q・養育費の取り決めをしても、途中から支払わなくなるケースが多いとよく聞きます。
その場合は、どうしたらよいですか。

A・上で説明したように「公正証書」を作っておくか、調停調書(家庭裁判所の調停で養育費の支払方法を決めた文書)などがあれば、地方裁判所に強制執行の申立てをして、相手の給料等を差押えることができます。


 

● 養育費の強制執行が利用しやすくなった!

 

Q・養育費の強制執行について、平成16年の法改正で、より利用しやすくなったと聞きましたが、本当ですか。

A・よく勉強されてますね。
 これまでは、支払期限が過ぎた養育費しか強制執行はできませんでした。
 しかし、平成16年の改正により、養育費などの債権に関しては、支払期限を過ぎたものだけでなく、これから支払期限の来る分についてまで強制執行をすることができ、将来の給料まで差押えることができるようになりました。
 わかりやすく言いますと、これまでは未払いが発生する度に強制執行の申立てが必要でしたが、今後は、一度強制執行を行なえば、将来にわたって相手の給料から天引きで養育費を受け取れるようになったのです。
 また、給料は原則としてその4分の1までしか差押えることができませんでしたが、この法改正によって、養育費などに関しては2分の1まで差押えることができるようになりました。


 

● 夫の勤務先が分からない場合

 

Q・離婚後、夫が会社を退職し、転職先が分からず、給料の差押えができない場合はどうしたらよいですか。

A・相手を裁判所に呼び出し、相手の財産について陳述させる「財産開示制度」を利用することが考えられます。
 詳しくは弁護士に相談してみて下さい。