
4 マンションの管理・運営
第3.4 マンションの管理・運営 (4)滞納管理費の回収
● 管理費の時効は5年
Q・区分所有者の中に、マンションの管理費を何年も滞納している人がいて、困っています。
管理費が回収できなくなってしまうことはありますか。
管理費が回収できなくなってしまうことはありますか。
A・判例では、マンションの管理費の消滅時効期間は5年とされています。
放置しておくと、消滅時効を主張されて、5年以上前の分は回収できなくなる可能性があります。
放置しておくと、消滅時効を主張されて、5年以上前の分は回収できなくなる可能性があります。
Q・時効の進行を止める(時効の中断)には、どうすればいいですか。
A・滞納者に、現時点での滞納額を認める内容の承認書を作成してもらうことが最も簡便です。
これに対し、内容証明郵便で請求しただけでは、時効は中断しないから注意が必要です。相手が支払わない場合は、さらに6か月以内に、訴えの提起や、支払督促、民事調停の申立など、「裁判上の請求」を行う必要があります。
これに対し、内容証明郵便で請求しただけでは、時効は中断しないから注意が必要です。相手が支払わない場合は、さらに6か月以内に、訴えの提起や、支払督促、民事調停の申立など、「裁判上の請求」を行う必要があります。
● 区分所有法59条に基づく競売請求
Q・滞納者が承認書を書いたとしても、支払わない場合は、最終的には裁判を起こすしかないということですね。
それでも支払わないという場合は、判決を得て強制執行までいけば、滞納額を回収できるのでしょうか。
それでも支払わないという場合は、判決を得て強制執行までいけば、滞納額を回収できるのでしょうか。
A・そこまでいけば、通常は回収できる可能性が高いです。
しかし、マンションにまだ多額の住宅ローンが残っており、競売による金額がそれに満たないというようなケースでは、問題があります。
しかし、マンションにまだ多額の住宅ローンが残っており、競売による金額がそれに満たないというようなケースでは、問題があります。
Q・その場合はどうなりますか。
A・住宅ローンなど抵当権が設定されている優先債権や、競売の手続き費用は、それらへの配当が優先となります。
したがって、競売額(競売による買受可能価額)が、それら優先債権等にも満たず、剰余が生じないという場合は、結局、強制競売の手続は取り消されてしまいます。
したがって、競売額(競売による買受可能価額)が、それら優先債権等にも満たず、剰余が生じないという場合は、結局、強制競売の手続は取り消されてしまいます。
Q・そのような場合は、どうしたらいいのですか。
A・区分所有法59条の競売請求手続を行うという方法が考えられます。
Q・それは、どういう手続ですか。
A・マンションの共同利益に反する行為をした区分所有者がいる場合、その区分所有者をマンションから排除するために、管理組合などが、その区分所有者の所有する部屋について競売を申立てる手続です。
区分所有法59条の競売請求手続の場合には、剰余が見込まれなくても競売手続が取り消されることはありません。
区分所有法59条の競売請求手続の場合には、剰余が見込まれなくても競売手続が取り消されることはありません。
Q・しかし、優先債権等があれば、結局、競売代金からは、滞納管理費を回収できないのではないですか。
A・そうです。
しかし、そのような場合、区分所有法8条は、「区分所有者の特定承継人」が滞納管理費の支払義務を引き継ぐことを定めています。
したがって、管理組合は、競売によってそのマンションを取得した新たな区分所有者(競落人)に対し、滞納管理費を請求して回収することができます。
区分所有法8条により、競落人が滞納管理費の支払義務を引継ぐ点は、通常の強制競売手続も同様です。区分所有法59条の競売請求手続は、剰余が生じないという場合でも、競売手続が取り消されずに最後まで手続きが完了する(それにより新しい競落人が決定する)という点がポイントとなります。
しかし、そのような場合、区分所有法8条は、「区分所有者の特定承継人」が滞納管理費の支払義務を引き継ぐことを定めています。
したがって、管理組合は、競売によってそのマンションを取得した新たな区分所有者(競落人)に対し、滞納管理費を請求して回収することができます。
区分所有法8条により、競落人が滞納管理費の支払義務を引継ぐ点は、通常の強制競売手続も同様です。区分所有法59条の競売請求手続は、剰余が生じないという場合でも、競売手続が取り消されずに最後まで手続きが完了する(それにより新しい競落人が決定する)という点がポイントとなります。
● 管理費回収のために要した弁護士費用について
Q・「管理費の回収を弁護士に依頼した場合、弁護士費用を滞納者に請求することはできますか。
A・原則として請求できません。
ただし、管理規約の中に、例えば、「滞納者に対する未払管理費請求訴訟を提起した場合の弁護士費用は、違約金として滞納者が負担する」などという規定がある場合には、請求できる可能性があります。
しかし、この場合でも、全額を常に請求できるというものではありません。
訴訟に至るまでの経過等に鑑みて、弁護士に依頼して訴訟を提起したことがやむを得なかったかどうかといった点が考慮されます。
ただし、管理規約の中に、例えば、「滞納者に対する未払管理費請求訴訟を提起した場合の弁護士費用は、違約金として滞納者が負担する」などという規定がある場合には、請求できる可能性があります。
しかし、この場合でも、全額を常に請求できるというものではありません。
訴訟に至るまでの経過等に鑑みて、弁護士に依頼して訴訟を提起したことがやむを得なかったかどうかといった点が考慮されます。