3 住まいの法律相談

第3.3 住まいの法律相談 (1)賃貸住宅のトラブル(漏水事故)

● 漏水事故の被害に遭ったときは

 

Q・私は2階建てアパートの1階で独り暮らしをしている学生です。
 2階の住人が不注意で風呂の水を出しっ放しにしたまま外出したため水漏れが生じ、階下の私の部屋が水浸しになってしまいました。
 私が外出中の事故だったので、部屋にあったパソコン等の電子機器も水浸しになり、全て使用できなくなりました。
 また、ほこりや汚れで黒く濁り、臭いもきつく、とても部屋に住める状況ではなく、現在は、ビジネスホテルでの仮住まいを余儀なくされています。
 私は2階の住人に対して、どのような請求ができるでしょうか。

A・今回の漏水事故は、2階の住人の不注意が原因で発生したものですから、不法行為に基づく損害賠償請求ができます。


 

● 損害賠償請求の範囲

 

Q・今回の事故では、どのような損害賠償の請求ができますか。

A・漏水事故により生じた損害が賠償請求の対象となりますので、水浸しとなった家財や衣類のクリーニング、修理、買い替え費用を請求できます。壊れたパソコンの修理、購入費用も当然請求できます。また、ホテル代は、1泊の料金が相当な範囲内である限りは、損害と認められます。
 ただし、ホテルでの食事代については、どこで飲食するかはあなたの自主的な判断に委ねられており、また、食費は漏水事故に関係なく発生するものですから、損害には含まれませんので注意して下さい。


 

Q・部屋の修復費用については、損害にならないのですか。

A・漏水によって、建物について損害を被ったのはその所有者である大家です。ですから、あなたではなく、大家が2階の住人に対し、部屋の修復費用を請求できることになります。
 なお、大家はあなたに対し、部屋を貸す「賃貸借契約上の義務」があります。大家に対し、あなたから早期の修復を請求して下さい。


 

● 加害者の火災保険加入の有無は要確認

 

Q・よくわかりました。損害はかなりの額になりそうなので、2階の住人から支払ってもらえるのか心配です。

A・賃貸借契約を締結する際には、借主は火災保険に加入することが多いので、その場合には、保険会社が損害賠償を一括でしてくれます。
 2階の住人が火災保険に加入しているかどうか、本人や大家にまず確認してください。


 

Q・パソコンが使えなくなってしまったため、レポートが作成ができず非常に困っています。しかし、パソコンを購入する余裕もありません。どうにかならないでしょうか。

A・保険会社によっては、損害賠償金の一部について、仮払いの制度を設けている場合もあります。2階の住人が火災保険に加入している場合は、保険会社に仮払いの対応が可能かどうか相談してみるといいでしょう。
 なお、火災保険に加入していない場合には、2階の住人に直接請求するしかありません。一括支払いや、仮払いの実現は難しい場合も多いでしょう。


 

● 部屋の使用不能と賃料支払義務

 

Q・お金のことでもう一つ心配なことがあります。部屋の家賃についてですが、漏水事故が生じてから生活ができるまでの期間の分の家賃について、私は、大家に支払わなければならないのでしょうか。

A・支払う必要はありません。家賃は、建物の使用の対価ですので、部屋が生活できる状態に回復するまでは、家賃の支払義務も発生しません。