
2 敷金に関するトラブル
第3.2 敷金に関するトラブル (4)家主が替わった場合
● 建物売却によって家主が替わった場合
Q・第3、2、(2)と(3)での相談の続きだけど、私の甥っ子が借りて住んでいた建物が売却されて、家主が替わったみたいなのだけど、この場合、甥っ子は住み続けることはできるのかしら。
A・住み続けることができるよ。この問題は、第3、3、(3)でも解説しているよ。
Q・第3、3、(3)の解説にもあるとおり、この場合、敷金は当然に新しい家主に引き継がれるのね。
A・そうなんだ。「賃借権に対抗力がある」場合には、敷金は当然に新家主に引き継がれるよ。
Q・どのような場合に「賃借権に対抗力がある」ことになるのかしら。
A・建物の賃借権については、借地借家法という法律で、借主に「建物の引渡し」があった場合に対抗力が認められるとされているんだ。
甥っ子さんは、建物を借りて住んでいるわけだから、「建物の引渡し」があったといえ、対抗力が認められるよ。
甥っ子さんは、建物を借りて住んでいるわけだから、「建物の引渡し」があったといえ、対抗力が認められるよ。
Q・以前の解説でもあるけど、たとえば、前の家主に対し家賃の不払いなどがあり、前の家主がそれを敷金から差し引いていたような場合には、新家主に引き継がれる敷金の額は、その残額にとどまり、新家主からその不足分を差し入れるよう、求められることがあるのね。
A・そうだね。
● 競売によって家主が替わった場合
Q・もし売却ではなくて、建物に銀行が設定していた抵当権に基づいて競売されたことによって家主が替わってしまった場合も同じように考えればいいのかしら。
A・いや、競売によって家主が替わった場合、借主が対抗力を備えた時期と、抵当権設定登記がされた時期とを比較して結論が変わることになるよ。
Q・借主が対抗力を備えた時期の方が早い場合はどうなるの。
A・この場合は、売却の場合と同様に考えるんだ。つまり、新家主に賃借権を主張することができるし、敷金も当然に引き継がれるんだ。
Q・抵当権設定登記がされた時期の方が早い場合にはどうなるの。
A・原則は、借主は賃借権を新家主に主張することができず、新たに新家主との間で賃貸借契約を締結しない限り、借主は出て行かなければならなくなるんだ。なお、競売から6ヶ月間は猶予されることがあるよ。
(※民法改正時期との関係で、平成16年4月1日の時点で、既に期間3年以下の賃貸借契約が締結されている場合は、借主は競落した新家主に対し、賃借権を主張できます。)
(※民法改正時期との関係で、平成16年4月1日の時点で、既に期間3年以下の賃貸借契約が締結されている場合は、借主は競落した新家主に対し、賃借権を主張できます。)
Q・抵当権設定登記がされた時期の方が早い場合で、かつ、賃借権を新家主に主張できずに建物を明け渡さなければならないとき、敷金はどうなるのかしら。
A・借主が賃借権を新家主に主張することができない以上、「賃借権に対抗力がある」とは言えないから、敷金は引き継がれないことになるんだ。)
Q・そうすると、借主が支払った敷金はどうなるのかしら。
A・旧家主に対して返還を求めるしかないよ。ただ、旧家主は銀行への返済ができないことを理由に、抵当権に基づいて競売されている状態だから、現実に支払ってもらうことは難しいかもしれないね。