2 敷金に関するトラブル

第3.2 敷金に関するトラブル (3)借主負担の場合の留意点2

● 損耗・毀損の回復費用

 

Q・第3、2、(2)で相談した私の甥っ子の相談の続きだけど、甥っ子は、部屋をきれいに使っていて、壁のクロスに大きな傷を付けた以外は、目立った汚れや傷はないの。
 でも、貸主からは、「一部分だけ張り替えても、色・模様が違ってしまうので、すべて張り替えてもらう」、と言われているらしいの。
 すべて張り替える費用を負担しないといけないのかしら。

A・原状回復は、損耗・毀損した部分を復旧することだから、借主が負担する部分は、可能な限り損耗・毀損した部分の回復費用に限定するとされている。
 クロスの色や模様を一致させるためにすべてを張り替えるというのは、本来貸主側で負担すべき「経年変化」分までを含むものであり、それを借主が負担する必要はないよ。

Q・可能な限り損耗・毀損した部分の回復費用に限定するということは、甥っ子の場合、傷が付いた部分だけを、部分交換すれば足りるのかしら。

A・今の修復技術はとても高いから、それだけで足りる場合もある。しかし、大きな傷で、どうしても修復の跡が目立つという場合は、四方の壁のうち、損耗・毀損した壁の一面だけを張り替えるだけでよいと考えられるよ。

Q・壁の一面だけの負担だとしても、やはり経年変化分まで負担することになってしまわないかしら。

A・その場合でも、前回説明したように、経年変化分を考慮して、借主の負担割合を決めることになる。そうすれば、借主の過剰な負担とはならないと考えられる。
 負担割合を決める方法はいくつか考えられるけど、クロスの場合、「6年」で残存価値が1円となるような直線を想定して、「経年変化」分を算定し、負担割合を決める方法がある。
 それによれば、新築マンションに4年間住んでいたとすれば、「経年変化」分は、100%×4年/6年=66.7%。
 仮に、「壁一面」の張替費用が10万円だとすれば、借主の負担は33.3%の額(3万3300円)と算定されるよ。


 

● 損耗・毀損が著しい場合

 

Q・損耗・毀損が著しい場合は、修復は一室全部ということになる場合があるということね。

A・そうなるね。たとえば、カーペットやフローリングの損耗・毀損が、複数箇所にわたっている場合や、喫煙によって部屋全体のクロスがヤニで変色していたり、タバコの臭いが付着しているという場合は、一室全体についての修復が必要となる。
 しかし、その場合でも、経年変化分を考慮して、借主の負担分を算定することが望ましい。

Q・いずれにせよ、部屋はきれいに使うに越したことはないということね。

A・そうだね。