
1 借地・借家一般
第3.1 借地・借家一般 (3)敷金と原状回復
● 家主から、原状回復費用がかかるので、敷金は返せないと言われた!
Q・引っ越しをしてアパートから立ち退いたところ、家主から、ハウスクリーニング代が原状回復費用としてかかるので、敷金は返せないと言われてしまいました。原状回復とはどういうことですか。
● 原状回復とは
A・そのアパートに最初に入居したときの状態のことを、法律用語で「原状」と言います。賃貸借契約書では、建物から立ち退く際に、元の入居時の状態に戻す義務を、借主に負わせる約定になっていることが多く、原状回復義務と呼ばれます。
● 自然損耗や通常損耗は対象外
Q・そうすると、家主が言うとおり、ハウスクリーニング代は、借主であった私が全て負担しなければならないのですか。
A・いいえ、そうではありません。建物は、年数が経てば自然に傷んでくるものですし、人が住めば多少はどうしても汚れたりするものです。
そのような経年劣化による自然損耗や、通常の使用による損耗まで、原状回復しなければならないとなると、借主の負担が大きすぎます。
そこで、借主の故意・過失や、通常の使用方法に反する使用など、借主の責めに帰すべき事由による損耗だけを原状回復すればよいと、解釈されています。
そのような経年劣化による自然損耗や、通常の使用による損耗まで、原状回復しなければならないとなると、借主の負担が大きすぎます。
そこで、借主の故意・過失や、通常の使用方法に反する使用など、借主の責めに帰すべき事由による損耗だけを原状回復すればよいと、解釈されています。
● 具体例をあげてみると
Q・もう少し具体的に説明してもらうと、どういうことになるでしょうか。
A・たとえば、日照などの自然現象によるクロスの変色、壁に貼ったポスターや絵画の跡、テレビ・冷蔵庫等の背面にできる、いわゆる電気ヤケなどは、通常損耗にあたり、原状回復の必要はありません。
これに対して、飼育ペットによる柱等のキズ、引越作業で生じたひっかきキズ、エアコンなどから漏水し、その後放置したために生じた壁・床の腐食などは、借主の責に帰すべき事由による損耗にあたり、借主が原状回復をしなければならないと言われています。
これに対して、飼育ペットによる柱等のキズ、引越作業で生じたひっかきキズ、エアコンなどから漏水し、その後放置したために生じた壁・床の腐食などは、借主の責に帰すべき事由による損耗にあたり、借主が原状回復をしなければならないと言われています。
● 敷金の返還請求に適した少額訴訟
Q・私の場合、ほとんどが自然損耗や通常損耗だと思うのですが、それでも家主が敷金を返してくれないときは、どうしたら良いでしょうか。
A・家主がどうしても返還に応じないときは、調停や裁判を起こすしかないのですが、裁判となると一般の方には難しく、また調停も時間と手間暇がかかってしまいます。
しかし、一般の方でも起こしやすく、原則1回で裁判が終わる簡易裁判所の「少額訴訟」という制度があります。
60万円以下の金銭の支払いを求める場合にだけ利用できる制度ですが、敷金の返還請求には適していますので、検討してみてはどうでしょうか。
しかし、一般の方でも起こしやすく、原則1回で裁判が終わる簡易裁判所の「少額訴訟」という制度があります。
60万円以下の金銭の支払いを求める場合にだけ利用できる制度ですが、敷金の返還請求には適していますので、検討してみてはどうでしょうか。
● 入居時・退去時の状態を明確に
Q・その他、気を付けておいた方が良いことは何でしょうか。
A・原状回復費用をめぐっては、入居時の状態すなわち原状がどうだったのか、また、退去時の状態がどうなのかが問題になります。
ですから、後で水掛け論にならないように、入居の際にキズや故障があった場合には、それを直ちに家主に指摘して認識させておくとか、入・退去の際に部屋の中の写真を撮っておくなどの工夫をした方が良いでしょう。
ですから、後で水掛け論にならないように、入居の際にキズや故障があった場合には、それを直ちに家主に指摘して認識させておくとか、入・退去の際に部屋の中の写真を撮っておくなどの工夫をした方が良いでしょう。
● 入居中の修繕の問題は?
Q・退去のときではなく、入居中に修繕が必要となった場合は、貸主・借主どちらの負担になるのですか。
A・これについても、借主の故意・過失や、通常の使用方法に反する使用など、借主の責めに帰すべき事由により、故障等が発生した場合(たとえば、子供が遊んでいて割ってしまった窓ガラスや、お風呂の空だきによる故障など)は、借主の負担となります。
しかし、それ以外の修繕(たとえば、もともと設置されているエアコンや給湯器・風呂釜の経年的な故障や、雨漏り、建具の不具合など)は、基本的に、貸主の負担になるとされています。
しかし、それ以外の修繕(たとえば、もともと設置されているエアコンや給湯器・風呂釜の経年的な故障や、雨漏り、建具の不具合など)は、基本的に、貸主の負担になるとされています。