1 借地・借家一般

第3.1 借地・借家一般 (2)賃料の値上げ・値下げ

● 家主から家賃の値上げ要求が!

 

Q・今の8万円の家賃を、今度の契約更新の際に、10万円に値上げすると家主から言われました。応じなければならないでしょうか。


 

● 近所の不動産屋の物件などで、家賃相場を調べてみよう

 

A・近隣の家賃相場から見て安いようであれば、値上げもやむを得ない場合がありますが、そうでなければ応じる必要はありません。


 

● 更新できなくても大丈夫

 

Q・値上げに応じないのであれば、契約の更新はできないと家主は言っているのですが。

A・たとえ家賃の合意ができないまま更新時期を迎えたとしても、そのまま住み続けていれば、法律上、契約は自動更新されたことになりますから心配ありません(合意更新に対し、これを法定更新といいます)。
 法定更新後の契約は、「期間の定めのある契約」から「期間の定めのない契約」に切り替わりますが、それ以外は従来と全く同じ内容の契約として更新されます。
 ですから、「更新の契約書を作ってもらうために、不当な値上げをのまなければいけない」と思う必要は、全くないのです。


 

● 家賃の受け取りを拒まれたら、忘れずに供託を

 

Q・これまでと同じ金額では、家主が家賃を受け取ってくれない場合は、どうしたら良いのでしょうか。

A・そのままにしておくと、家賃不払いで契約を解除されてしまいます。
 そのような場合、法務局に供託すれば、家賃を支払ったことになります。
 これまでと同じ金額で構いませんから(自分で適当と思うだけ値上げした金額でも勿論OKです)、毎月必ず供託するようにして下さい。


 

● 供託の有効要件に注意!

 

Q・これまでと同じ金額では、家主は受け取らないに決まっているので、家主のところに持参せずに、供託してしまって良いでしょうか。

A・家賃の支払方法が振込の場合には、受取拒否がおこらないので、従来どおり振り込んで下さい。
 しかし、家主のところに持参して支払っていた場合には、必ず一度、これまでと同じ金額を家主のところに持参して、受け取るよう促して下さい。
 それでも受取拒否をされたということを、供託の手続きの際に、書類に書く必要があるからです。
 2回目以降は、持参不要です。そのまま法務局に供託して大丈夫です。


 

● むしろ賃料の値下げを要求したいが・・・

 

Q・不況で近隣の家賃相場も下がっているので、高くなりすぎている家賃を、逆に値下げするように家主に要求したいのですが。

A・まず、家主に対して値下げの要求をして下さい(要求は文書でおこない、その文書の写しを保存しておきましょう)。
 その上で話し合いをして家主が値下げに応じない場合には、裁判所に調停の申立てをする必要があります。
 それでも家主との話し合いがまとまらない場合は、今度は裁判を起こし、裁判官に適正な家賃額を決めてもらうことになります。
 値下げが決まった場合、その効果は、最初に値下げの要求をした時点に遡ります。ですから、たとえば値下げ要求をして1年後に値下げが決まった場合ですと、1年間分の払いすぎていた額〔(それまでの家賃-値下がり後の家賃)×12ヶ月〕が戻ってきます。
 しかも、それだけでなく、払いすぎた金額に、年1割の利息までついて戻ってくることが、法律で決まっています。


 

● 借地の場合は?

 

Q・そうなんですか! 分かりました。
 では、借家ではなく、借地の場合はどうなんでしょうか。

A・借地の地代の場合も、以上述べた借家の場合と基本的には同じです。
 違うのは、自動更新(法定更新)された場合の、更新後の借地契約の年数が、法律で定められている点だけです(ケースによって、10年、20年、30年のいずれかになります)。