2 遺言の法律問題

第1.2 遺言の法律問題 (2)遺言を発見した場合の対処法

● 遺言を見つけたら・・・

 

Q・夫が亡くなった後、夫の遺品を整理していたところ、夫の筆跡で「遺言書」と記載のある封筒が見つかりました。遺言の内容を確認したいのですが。

A・遺言書の内容を確認したいというお気持ちはわかります。しかし、あなたには封を開ける前にやっておくべき手続きがあります。

Q・どのような手続きですか?

A・「検認」という手続きです。なお、公正証書遺言については「検認」の手続きを経る必要はありません。


 

● 検認について

 

Q・「検認」とはどういう手続きなのですか?

A・「検認」とは、相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして、遺言書の偽造・変造を防止するための手続きです。
 遺言書の有効・無効について家庭裁判所がお墨付きを与える手続きではないので、検認をしさえすれば、遺言についての紛争が一切生じないということではありません。
 検認の申立ては、遺言者の最後の住所地の家庭裁判所に対して行います。


 

● 検認の手続きをせずに内容を確認した場合

 

Q・検認の手続きをせずに、遺言の内容を確認した場合にはどうなってしまうのですか。

A・検認の手続きをせずに遺言書を開封した場合には、5万円以下の過料に処せられるおそれがあります。
 また、他の相続人の立会いなく遺言の内容を確認した場合には、遺言の偽造等の疑いがかけられ、相続財産の迅速な分配に支障が生じかねません。


 

● 具体的な検認手続きの方法、流れ

 

Q・それは厄介ですね。トラブルがないよう検認の手続きをしっかり進めていこうと思います。
 ところで、検認の申立ては私が単独でしていいのですか。夫の相続人は、私の他に息子もいますが。

A・はい、あなたが単独で申立てをして下さい。
 検認の手続きは、1.遺言書の保管者か、2.遺言書を発見した相続人のいずれかが行うこととされています。
 本件では、ご主人の相続人(配偶者)であるあなたが遺言書を発見したのですから、あなたが検認の申立てを行うことになります。

Q・わかりました。では、検認の申立てに際して必要な書類は何ですか。
 また、申立て手続き完了後、実際に遺言の開封を行うのはいつ頃になりますか。

A・検認の申立てには、申立書及び遺言書のほか、法定相続人の全員が確認できる、夫の出生時までさかのぼった戸籍謄本と、相続人全員の戸籍謄本が必要です。
 その他、事情に応じて、必要な書類が変化しますので、家庭裁判所に事情を説明して必要書類を確認するといいでしょう。
 また、申立て手続き完了後も、相続人に対する連絡等に時間がかかるので、申立てから検認期日まで、1か月程度はかかります。

Q・検認期日には、どのようなことをするのでしょうか。

A・申立人が持参した遺言書を裁判所に提出し、出席している相続人などの立会いのもとで、遺言書の封筒を開封します。

Q・検認手続には相続人全員が出席しないといけないのでしょうか。

A・いいえ。申立人以外の相続人が検認手続に出席するかどうかは、各人の判断に任されます。
 相続人全員が出席していなくても、検認を行うことはできます。

Q・どうしても遺言書の内容を確認するためには時間がかかってしまうのですね。まずは、着々と検認申立ての手続きを進めてみます。

A・遺言の検認手続き終了後も、遺言の内容によっては、その執行が必要となる場合があります。
 裁判所に遺言執行者を選任してもらう必要が生じる場合もあります。